スピーカーセッティングをくそ真面目にやり直す [再生音楽の聴取環境など]
お仕事が暇なことに加えて冬はLP再生の条件が良好になってくる為、メインシステムで聴く時間が長くなってくるのが毎年のサイクルだ。
4年くらい以前だったと思うが、CDプレーヤーを買ってからメインシステムには機材の更新も買い増しもない。理由の第一は何と言っても私に金がないからなのだが機材のグレードを上げる必然性を感じるほどの音楽ソースに巡り会えていないからという事由もある。
やれ中古カメラだ、iPodだ、魚釣りだと寄り道と脱線を続けているうちに、音楽を聴く姿勢が段々不真面目になってきたのかもしれないと薄々自覚し始めるこの冬だったわけでございます。
最近漫然と色々聞いているうちに、そういえばどうも、プレゼンスがおかしいのではないかと勘づいた。音量が左側に偏っているようだし、センター定位が滲む。前後関係も何か混濁して聞こえる、など。
どうせ機材も中古になってきたのでそのせいだろうと幾分ヤケッパチ気味に聞き流していたが気になるものはやっぱり気になるのである。もしかしたらと分度器とスケールを持ち出し、設置位置を計り直してみた。
左側のスピーカーが右側に比べて角度にして大体8度、外振りになっていた。設置に使っているスペーサーはアルミ合金製なので地震があるとずれやすい。思い出してみるとここ2年くらいは、ずれのチェックを怠っていたのだ。
CDを鳴らしながらスピーカーの位置を少しずらしてはリスニングポイントに戻るを繰り返しているうちに、ぼやけた焦点が徐々に輪郭を鮮明にして結像するような変化を見せ始める。カメラのピントリングをいじっている感覚だ。
記憶にあるステレオイメージには、それでもなお食い違いがあるのであれこれ聴きながら思案しているうちに、椅子の位置を測り直すことにした。
案の定というか、部屋をセンター割りにすると右に5センチくらいずれていた。立ったり座ったりを繰り返しているうちに椅子が徐々にずれていたのだった。
たったこれだけの修正でステレオイメージは更にキリキリと鋭いピントを示し始める。20年近く前にこのツイタテスピーカーを買い込んだときの驚きが蘇ってきた。
センター定位確認のため、敢えてモノラル録音のソースに登場して貰う。
- アーティスト: カーメン・マクレエ, ウェンデル・マーシャル, マンデル・ロウ, ビリー・ストレイホーン, マット・マシューズ, ハービー・マン, ケニー・クラーク, ディック・カッツ
- 出版社/メーカー: ユニバーサルクラシック
- 発売日: 1999/11/03
- メディア: CD
角度にして8度とか、位置にして5センチとか3センチとかの変化で拙宅のツイタテは露骨にへそを曲げることを改めて確認する。最初は間口いっぱいに漠然と広がっていたでっかい口が消えた。代わりにスピーカーのちょうど中間に幅が大体10センチ以下で見えない柱状の発音体が出現する。スピーカーの存在はかき消えて全ての音はその、見えない柱から発せられる感じである。
ここで首を左右に傾けると大体3センチくらいでこの柱は消えて元通りの漠然と横に広がるでっかい口が現れる。前後では5センチくらいか。つまり、頭の固定位置から左右に6センチ、前後に10センチ以内に両耳が収まってなければならない。そこを外れるとステレオイメージは無惨にぼやけ始める。改めて思うが、本当に神経質なセッティングを要求するじゃじゃ馬である。ここ1年くらいの怠慢な接し方を難詰されているようである。数年前、歯医者の治療台の必然性を感じたことをここで思い出した。現実問題としてはヘッドレストのついた椅子が必要だな、と、一人ごちる。
セッティング終了後の確認として登場するお約束ソースのうち、本日はこれにご登場願った。
手前みそだが、久々に絶句ものだ。金縛りの40分を過ごして妙な自己満足に浸る小生だった。
ここ数年、値段ばっかり高価な、まるで金持ちのひけらかし道具みたいな機材の氾濫でオーディオなどというのはさっぱり面白くない行為に思えていたことをここで白状してしまいます。お金で解決を計るしかないような営為は趣味とは言えねえよ、と、いうのが持論ですが、腕前勝負の余地はやはり幾らか残っていることを再確認できて少々嬉しい気分である。
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