SSブログ

The Allman Borothers Band at Fillmore East(フィルモア・イースト・ライブ/オールマン・ブラザーズ・バンド) [音楽のこと(レビュー紛いの文章)]

 近日の書き込みで男臭いとかフィルモア・イーストとかが何かのキーワードのようになって意識にこびりついていて数日気になっていたのだが、そこから連想される音楽はこれだったんだとすぐに気づいた。

フィルモア・イースト・ライヴ

フィルモア・イースト・ライヴ

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: USMジャパン
  • 発売日: 2006/06/21
  • メディア: CD


 誰から見ても疑問の余地がない傑作中の傑作というのはやはりあるのであって、今更私ごときが含蓄紛いの文章を垂れ流すまでもないのは百も承知だが、聴く人をして何かに駆り立てずにはおかない音楽というのもやはりあるのではなかろうか。 

 演奏の技巧だとか、作編曲の技法だとかいった技術論はさておき、音楽について何かを語るとするならばそれは大なり小なりリスナーの主観や印象を対象化することを免れないと思う。
 音楽を題材に、私自身の取るに足らない個人史みたいなことや印象作文紛いの駄文を並べて果たしてそれが一体どれだけの普遍性を獲得できているのか、何ほどの値しか持ち得ていないのか、この益体もないブログを覗いてくださる方々の生活時間に見合うだけの内容を持ち得ているのか、自分のパソコンのデスクトップだけに留めておく程度のものでしかないのではないか。考えてみれば音楽のことに限らず、自分のブログを持ってこうしてキーボードを叩くのは本当に心許ないというか、確信の持てない所為だと思う。
 しかしそれでも誰かに伝えておきたいと思える出来事なり表現にはやはり遭遇するのであって少年期から青年期にかけて数え切れないほどターンテーブルに載ったこの音楽のことは一人でも多くの人に聴いて貰えたら嬉しいと心底思う。

 書きたいことは沢山ありすぎて整理に困るほどなのだが、正式リリース3作目である本作はスタジオワークに於ける様々な制約から解放された、文字通りライブアクトの理想像を見事に捉えている。
 後の多くのロックバンドにとって、ライブアルバムというのはそれまでのスタジオワークのダイジェスト的ショーケースとして扱われることが多くなり、MCと拍手と歓声が収まっている以外はスタジオレコーディングとさして変わらない演奏内容であるリリースが随分目に付いたが本作はそうではない。
 
 演目は前2作からのチョイスとトラディショナルなブルーズナンバー、および、ジャム的な即興と奇をてらったところは特にないが演奏のボルテージといいソロパートが長尺化された分の起伏を増した展開といい、スタジオワークとは別の曲を聴いているようでさえある。
 大体の場合、ライブアクトに特有のステージギミックは視覚を伴って初めて楽しめる程度のもので、音だけ聞いていれば結構間延びした印象を受けて退屈なものだが、驚くことにここでは散見されるそれらでさえもが曲の場面転換や次の展開の起爆剤であったりする。
 結果として全ての曲は前作や前々作に比べるとテレビドラマと映画くらいの違いとして演じられている。同時期に録音されたブート盤などを聴いていると同じ曲目でも良く言えばもっとリラックスした、悪く言えばややダレ気味のノリなのだが本作は違う。スローブルーズであっても緊張感は保たれ、アップテンポでは文字通り火を吐くようなパッセージが連続する。全編を貫く骨盤を揺するようなグルーブ感はブルーズが決して黒人だけのものではなく、白人によってこういう風に昇華されることもあり得る奇跡のような達成を示している。

 私は毎度、この日はミューズの降臨した特別な夜だったのだろうとついつい一人勝手に感激する。人が演じる以上、音楽は全て一度きりのものだという見方はすっかり体に染みついているが、一回性の持つ手に汗を握るようなスリルや刹那的な美しさをここまで強烈に訴えてくる記録は全ての音楽カテゴリーを見回してもそうざらにあるものではない。アドリブのもたらす感動は決してジャズだけのものではないのだ。 
 土臭く、野太い彼らの身振りから繰り出されるこの記録が何ともイノセントに聞こえるのは何故だろう、何度聴いても変わらずに胸が熱くなるのは何故だろうといつも私は自分に問いかけてきた。それこそが音楽の魔法であってそこに届く言葉を探し出すことが音楽の愛好家としては永遠の課題なのだが、私の貧しい語彙から苦心惨憺してひねり出してみれば、音楽が生き物であることや魂が燃え上がるような時間というのは、例えばこういう音楽のことであって、それは常に無条件で美しいと言うに尽きる。

 私は本作にひどく入れ上げてLPレコードを2セット買った。1セットは聴かずに取ってあり、もう片方はそれこそ無茶苦茶に聴きまくった。
 ところで、問答無用の金字塔である本作には実に意地の悪いエンディングが用意されている。LPレコードというパッケージに収録する以上仕方ない措置ではあるが、最後に収録されているWhipping Postのエンディングの後、拍手と歓声の中次の曲であるMountain Jamのイントロが始まりながらフェードアウトしていくこの編集!何度聴いても「頼む、終わらないでくれ!続いてくれー!」と思うのは決して私だけではないと思いますよ。
 当然、お約束のように本作を聴き通した後の私は毎度こちらを棚から引っ張り出してくる習慣がある。

イート・ア・ピーチ

イート・ア・ピーチ

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル インターナショナル
  • 発売日: 2006/06/21
  • メディア: CD


nice!(1)  コメント(3)  トラックバック(1) 
共通テーマ:音楽

nice! 1

コメント 3

deacon_blue

☆ このライブの熱というか,汗くささが今はたまらなく良いです。
by deacon_blue (2007-06-05 13:00) 

shim47

deacon_blue 様 コメント有り難うございます。
若い頃には専らソロパートに意識が集中していましたが、中年期以降は全体的なグルーブ感に気持ちよさを見つけました。
年齢と共に聴き方も変化していくようですが、これが本作の滋養の濃さだと思いました。
by shim47 (2007-06-06 03:21) 

sugarbb

ただいまStomy Mondyをおやじバンドでやるべく練習中。私はディアンのパートだけどね。エリザベスリードもやりたいんだけど。
by sugarbb (2007-07-01 05:29) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

Live/Jhonny Winter a..Still/Pete Sinfield(.. ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。