即席システムでゆるい時間を過ごす [再生音楽の聴取環境など]
昨日の続きでにわかシステムに灯を入れて音楽を聞き流す。音質の追求ということはここでは一切しない。
幾つかある休眠状態のアンプの内、今回はマランツのModel 1250を引っ張り出してきている。一聴するとどこか物足りない印象だが長時間付き合っていても聴き疲れのしないところはこの会社の好ましいトーンポリシーだと思っている。
製造年度は1976年、もう30年も前の製品だ。当時はとても手の届かないアンプだったがネットオークションという便利な仕組みのおかげで中古機を手に入れることができた。4年くらい前のことだっただろうか。
同じく中古品で手に入れたFMチューナーと重ねてどこかにぎにぎしい面構えを眺めていると少々ノスタルジックな気分に浸って音出しも結構楽しかったりする。
良くも悪くも「昔の音」だ。現代の製品には遠く及ばないところはいっぱいあるがここから失われたものも幾つかはあるように感じる。
音色云々は感覚上の問題で言い出すときりがないのでここでは書かない。ただ、ウォームアップタイムなど考慮しなくても電源を入れるなりいきなり本来的な音質で聴けるのは古い製品の良いところだと思う。
そもそも、再生音楽の利点は思いついたときにポンと聴けるところなのであって、幾ら高音質だからといって本調子に至るまでに30分も1時間もも通電していなければならないようなことでは再生装置が本調子になる以前にリスナーの関心が音楽以外のところへ向かってしまいかねない。3時間も4時間も映像の伴わない音だけの世界に没頭して意識の集中を持続出来るのはある種のトレーニングを積んだ少数のリスナーだけだということに、多くの音響機器メーカーが気づかない時間は余りにも長すぎた。
1970年代の中頃、FM放送は結構重宝な音楽ソースだった。LPレコード丸々一枚裏表をオン・エアーしてくれることはさすがになかったが、それでも私のような金欠音楽愛好家にとっては有り難かった。予備知識のないミュージシャンの音楽に無料で接することができる殆ど唯一の手段がラジオ電波だった時代だけに放送内容も受信機であるチューナーも今よりは相当気合いが入っていた。
現在の家に引っ越して以来、私はBGMとしてFM放送を結構良く聴くようになった。残念ながら30年前とは大違いで受信環境は劣化の一途を辿りノイズ混じりの受信になってしまうがまあまあ我慢出来なくもない。
昔のアンプに付属するトーンコントロールやフィルター類は現在とは目的がかなり異なっていると私はいつも考えている。メインソースがCDである現在とは違って昔の製品はイコライジングの可変幅が相当に広い。夾雑物が介在することで音質が劣化する、情報伝達にロスが生じるというデメリットよりも出音のエネルギーバランスがあれこれと変化するのを面白がっているのがここ数日である。
Straight wire with gainは確かに理想だろうが、軽めの音楽を聞き流しながら色んな機能をこちゃこちゃと弄くり回すのも一つの楽しみ方ではないだろうか。
件のUSBターンテーブルにはオートストップ機能が付属している。LPレコードを聞き流しながら居眠りをしても勝手に止まってくれるわけだが深夜の帰宅後小音量でお気軽に何か聴きたいときなどはこれも有り難い機能だ。音質の追求一辺倒だけがオーディオシステムとの付き合い方ではないと今の私は考えていて、しばらくの間、こういうゆるい接し方が日常の作法になりそうだ。
- アーティスト: ジョージ・シアリング, マージョリー・ハイアムス, チャック・ウェイン, ジョン・レヴィ, デンジル・ベスト
- 出版社/メーカー: UNIVERSAL CLASSICS(P)(M)
- 発売日: 2007/12/05
- メディア: CD
LP2枚セットだけれど本日の一枚。ひっそりと優雅な貧乏生活にはわりかし良い感じの音楽である。私もオヤジになった。暇を見てそのうち何か、テキストでも書いてみようかしらん。
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