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ハエ退治にサル知恵を働かす [身辺雑記]

 昨日、ハエについてあれこれ書き殴っているうちに段々不快な気分が増してきたので、何かを実行しなくてはという使命感が心中に湧き起こってきた。ハエの命脈が尽きるのを待って毎日毎日我慢し続けられるほど私は忍耐強い人物ではないのだ。

 人を殺すとか、犬を殺すとか、まあ、猫でも鯛でもカエルでもいいのだが、とにかく何かの命を奪うというのは多少なりとも決意とか逡巡がつきまとうものだと思うのだが、ことハエに関する限り私にそのような迷いは全くない。 同じ昆虫であってもチョウチョの羽をむしるのは残酷な気がするがハエを叩き潰すことには何ら良心に痛痒がない。無益な殺生を戒めるのは私が門徒であるところの仏教の教えだが私は自宅を我が物顔に飛び回るハエどもを無益どころか大変はた迷惑な存在だと思っているので積極的に殺戮大作戦に乗り出すことを決意した次第だ。(我ながらたかがハエごときに何と大仰な・・・アホだ)

 本日朝、居間に降りてみるとあの忌々しい羽音がせず、静寂が保たれていた。やはり朝というのはこうでなくてはならない。早朝なので室温が低く、ハエどもも活動的ではないのだ。しかし人が活動するということは諸々のエネルギー消費行動の結果室温が上昇しはじめる。するときゃつらはやおら活動が活発化し、朝食を終えていつものようにゴロゴロしている私の周辺を腹立たしく飛び回り私にへばりついてくる。

 殺意の度合いが徐々に上がってくるのを自覚しながら私はどのようにしてきゃつらを殲滅するかについて思案した。ぶんぶんと喧しい周辺を見渡すとハエどもの個体数が予想以上に多い。昨日私は六匹と書いたがもう少し多そうだ。大体8匹程度があちこちに取り付いて尻を持ち上げ、後脚をこすり合わせている。室温が上がりすぎたのでストーブを消火するために立ち上がると私にへばりついていたハエどもが三匹位羽音をたてて離脱した。

 私は確かにバカの部類に入るが痩せても枯れても霊長類のヒト科なのだ。ハエごときのいいようにはさせない。

温血動物を舐めるなよ!と、殺意を滾らせながらストーブの火を消し、戦略を練った。

 無策でやり合ったのでは徒労に終わることは間違いない。運動神経のないこの私が幾らムキになってハエ叩きを振り回したところできゃつ等は私を嘲笑うように自由自在に逃げ回り、タバコを吸い過ぎの私は息を切らして膝をつくのがオチだろう。そもそも何故、私の家でこいつ等はこうも元気よく飛び回っているのかといえば家の中が温暖だからだ。寒くなれば変温動物であるハエどもは一様に活力を失って運動性は低下することを私は経験的に知っている。

 ならば家の中を故意に寒くすればよい。その状況下なら挙動の魯鈍な私程度の奴でも勝機は生まれてきそうに思えた。きゃつ等の集団はその飛行範囲は居間にほぼ限定されている。私は窓という窓を開けて外気を取り入れ、居間の室温が外気温と殆ど同じ位にしてお仕事のために一旦外出した。不用心極まりない愚行だがそれくらい私はムキになっていたのだ。(バカ丸出しとはこのことだ)

 果たして数時間後、帰宅するとハエどもが数匹、日のさす壁に取り付いていた。(居間の壁紙は白い)様子を眺めて私は一つ気付いたのだが、窓から差し込む日光があり、それが移り込む壁紙にはガラスの箇所と窓枠の箇所とでは当然濃淡が生まれるのだが、さすがに下等生物だけあってハエどもはガラス越しの明るい部分にだけ取り付いている。僅かでもより暖かそうな所に棲息しようとする本能はこういう風に表れるわけだ。気温が下がって活力を失っている様子が何故かはっきりと感じ取れる。

 勝機は我にあり、と、新聞紙を丸めた私は壁にへばりつくハエに忍び足で近寄った。思えば新聞などという、今や地球環境はおろか人間の精神生活にとっておよそクソの役にも立たない物体が、我が家に於いて初めて有効活用されようとしているのだな、と、一瞬思った。

 勝負は一撃で決した。本日の戦果は三匹。壁紙にはハエの体型通りに黒ずんだシミが残ったのが腹立たしい。仕留めた後で壁を拭いてみたがシミがなかなか取れない。全くハエという生き物はくたばってなお迷惑な生物であることを実感した。 私の殺気を察知してか、逃れたハエどもはどこかに隠れて居間が静まりかえる。

 窓を閉めた私は一服しながら自分も捨てたものではないではないかと結構満足していた。ハエなどという生き物には大した学習能力はないので今後もきゃつ等は同じ手口に引っかかり続けてやがて我が家に於いては絶滅するであろう。しかしハエ取り名人であった私の父は真夏であってもほぼ百発百中の打率を記録していた。サル知恵頼りの愚息はその域に達することは恐らく生涯ない。

 


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