針圧の調整にひとまず区切り [再生音楽の聴取環境など]
たかだかフォノカートリッジの交換だけでネチネチと更新するのも何だか貧乏くさいと思うが貧乏なのは現実である。備忘録風のことを書き留めておく。
懸念していた針飛びが不定期に起こり、ここしばらくの間試行錯誤を続けていた。全くもって悩ましいSLA-3 ではある。
印加針圧による音質変化など夢のまた夢で、針飛びを起こさないようなポイントを探し出すために四苦八苦しているのだから情けない。アームパイプやカウンターウェイトをとっかえひっかえしてああでもないこうでもないと徒手空拳の努力を重ねていた。オフセットアームであればカウンターウェイトをヘリコイドで動かすことになるし針圧の目盛りもついているので簡単に済むのだがこちらはご覧の通り1ポイント固定の直動式で針圧の目盛りもなく、不便なことこの上ない。
SLA-3を買って大変理不尽に思えたことの一つに、本体には針圧を読み取る機能がないのに単体の針圧計が付属されていない。マニュアルには別途針圧計を購入しておくようにとの但し書きがあったので当時私は仕方なしに一個買った。
約20年ほど前には三千円程度で買えたが現在は倍以上する。何とも原始的なシーソー式の針圧計だが壊れるところは一つもないので一個買えば一生ものである。精度については大変疑わしいがこれはもう信じるしかない。針圧を計っている最中にうっかりターンテーブルを動かしてしまってカンチレバーを折ったことがある。私の不注意が全てだが悲しい記憶である。
印加針圧の範囲は1.25gから1.75gとなっていてこの範囲内ではどう設定しても針飛びが治まらなかったのでなかば博打的な気分で1.8gに設定してみた、と言えば聞こえはいいが実際には指先をプルプルと震わせてカウンターウェイトを突っついて微動させたところ、針圧計の指示が1.8gでバランスしたので暫定的にそこで固定したのだった。
0.05gオーバーになるがトレーシングはかなり安定したので結果オーライと割り切った。毎度ながら音質云々を検討する気持ちの余裕など全くない位くたびれる。針圧の調整に費やした時間だけでもうんざりするほどかかっていた。
一体全体どうしてこんなにしんどい目を見ながらでこの厄介者に拘泥しているかと言えばこれまで何度も書いたとおり、時たま起こるとんでもない奇跡が忘れられないからだ。カリカリにチューニングした状態である種のLPを聴くと空恐ろしい位の精密さで虚空に音が実体化する。
マイクと口の距離までもが暴き出されるようなリアルさがある。アカペラではメンバーが弧状にマイクを囲んで唄っている様子が見えない彫刻を並べたようにはっきり現れる。部屋の壁と天井が消失するような錯覚を覚える。苦労の甲斐あってひとまずの上首尾となった。散々手こずり、文句とぼやきを並べながら結局私はこのけったいなトーンアームを手放せないでいる。
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