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凶気の桜(外した映画シリーズ?) [映画のこと(レビュー紛いの文章)]

 冬は暇になりがちなので安物DVDプレイヤーが健在なうちにどんどん安価なレンタルDVDを見続ける。

凶気の桜 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: 東映ビデオ
  • メディア: DVD

小さい映画だ。悲しいくらい小さい。メジャー系の東映にしてみればこれでも冒険したつもりなのだろうがそれにしても小さい。キャスティングとしては原田芳雄だけが光る。私はこの人に関しては昔から大甘。クールで陽気な殺し屋稼業役の江口洋介はかえって白々しい。

 無軌道な暴力さがより大きな暴力装置に取り込まれて消費され、摩滅していく物語というのは既に偉大な基準が出来ていて 本作はあらゆる意味でこれを超えていないし違った側面を生み出しているわけでもない。

時計じかけのオレンジ [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD

比較する事自体、酷な気はするがつまらないものはやっぱりつまらない。主演の窪塚洋介という人は一種、アイドル的な人気のあった人のようで、そういうタレントが暴力的な役柄を演じる事自体が一時の話題性を持ったのだろうが所詮それだけのことではないのか。

スケールといい、物語の起伏の大きさといい、あらゆる面で偉大なる先駆者には遠く及ばないのは明白だが 、一つ上げれば主人公の描かれ方が大変薄っぺらい。題材が何であれ、映画は約2時間なにがしの間に主人公が山あり谷ありの局面を経験して一段変化した存在に成長するのがある種のお約束だと私は考えている。

「時計仕掛けのオレンジ』での主人公アレックスは無軌道で無差別な暴力少年として始まり、途中強制的に矯正されたいじめられっ子としてあらゆる人からあらゆる迫害を受ける。そして最後にはより大きな凶暴さに呑み込まれて、今度はより大きな凶暴さの道具として再び暴力少年としての再生を遂げるという道筋をたどる。そんな二転三転の構図がドラマの核な訳だが本作での山口君は終始一貫、徹頭徹尾、いきり立った単細胞的暴力少年でしかなく、滑稽なくらい単調だ。加えて、幾ら強かろうが逞しかろうが徒党を組んで暴れているうちは男としての値打ちはない。孤独の中で満身創痍になってこそ美学が光り始めてくるのであって群れなす野郎共などというのはどこまでいっても自立できない弱さでしかない。

 劇中登場する彼女志願風の女子学生とのやりとりやエンドロールが終わってからのロングカットでは戸惑ったり怯えたりする様子を織り込んでその人格に奥行きを持たせた意図もあるのだろうがいずれも取って付けたような不自然さだけが鼻につく。 よって私的にはアイドルタレントの一時の人気だけにおんぶした凡作である。日本のメジャー系映画としては無機的な暴力少年という人物設定はそれなりの冒険だったのかもしれないが、冒険というには余りにも小さい。


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