「カイ」という雑誌を買ってみる [書籍]
コンビニに買い物に行ったらたまたま目についた雑誌を何の気なしに買ってきた。「カイ」という季刊誌である。
出版元は札幌市にあるらしい。
ホームページを見つけた。
偶然というか何というか、私が学生の頃、随分通い続けた喫茶店が紹介されていた。
読んでいて随分懐かしくなった。
場所は釧路市、店名は『ジス・イズ』といいます。
HPはこちら http://www.jazz-thisis.com/
私は18歳から22歳までの5年間を通い続けた。それからもう30年近くも経っているのだが、今は住まいも離れたところにあるので学生の頃のように毎週欠かさずというわけにはいかない。一番最近行ったのは1年半ほど前で、嬉しいことにオーナーはまだ私の顔を覚えていてくださった。
ここのお店で私は2度ほど、お茶代をタダにしていただいたことがある。
最初は留年が確定して暗い気分で帰省する前日のこと、二度目はどうにかこうにか学校を卒業出来て卒業式を済ませ、最初の就職先に向かおうとする汽車の待ち時間の前に立ち寄った時のことだった。
お会計を済ませてお別れを告げる時、オーナーはお勘定をチャラにしてくれた。私はお礼にも何にもなっていないが卒業式の時に貰った紅白まんじゅうを差し上げた。
その日のことを忘れたことはない。
慌ただしい一日だった。前日の夜、幾らかささくれ立った気分で家族と過ごし、深夜一人で置き出して夜行列車で釧路に向かい、早朝到着してから学校に向かって卒業式を済ませ、それから釧路の市内に向かってこの喫茶店でオーナーとちょっとだけ話をした。それから今度はまた夜行列車に乗って札幌へ、といった具合に一日のうちに流れ続けた。色んなことにお別れをして、色んなことを卒業した。
そしてそれから27年、私はまだ流れ続けている。
お店はライブなども行うようになり、私が貧乏学生の頃よりもだいぶ知名度も上がったようでご同慶の至りである。
思い出してみると当時の私は未成年の分際で偉そうにカウンター陣取って煙草を吹かしてはあれを聴かせてくれ。これが聴きたいなどとコーヒー一杯で一時間半も二時間も居着いており、全くもってロクな客ではなかった。オーナーにしてみれば迷惑千万だったのではないだろうかと身が縮む思いがする。
そしてまた思う、私はあれから一体どれくらい成長しているのか、あるいはまたどれくらい成長出来ずにいるのか。どれくらい摩滅してどれくらい保てているのか、何を失い、何を得たか。
年に数度、釧路へ足を運ぶ用事がある時にはお店をのぞく習慣があるが、その都度いつも感慨に耽る。
ある時からカウンター席は禁煙となり、喫煙するお客さんはボックス席に座るルールが施行されたので私は煙草を吸いながらオーナーとお話は出来ない。やっぱり迷惑な客だったのだ。
(追記)
2009-10-13 10:54
nice!(6)
コメント(4)
トラックバック(0)
思い出の店を持っているんですね、そして今でも。
ちょっとした知り合いのジャズ喫茶がつい先日閉めてしまいました。
東京の下北沢では名のある店でしたが。
by いっぷく (2009-10-14 04:59)
いっぷく様、コメント有り難うございます。
長い時間を経て永らえている、あるいはまた長い時間のうちに終息してしまう、それなりに生活時間が長くなってくるとどちらの場面も目にしますが、近年の私はどちらの場面もなにかしら重く響くものがあるように思えがちです。
何気なく過ごしているようでも、思い出というのはいつの間にか累積してくるのですね。
by shim47 (2009-10-14 09:11)
興味深い雑誌ですね。地元のことが一番おもしろいんだ、っていうこだわりに好感がもてます。渋いなー。
web上の立ち読みで記事をチラ見した程度ですが、たぶんこちらのオーナーの方は、喫茶で贅沢にお金を使ってくれるかどうかよりも、ジャズが聴きたい!ていう若者が大好きなんじゃないかと思いました。
by シロタ (2009-10-14 09:24)
シロタ様 コメント有り難うございます。
>ジャズが聴きたい!ていう若者
若造の頃の私はあるいはそのようにオーナー様の目には映っていたのかもしれません。雑誌ではお店を『感覚の道場』と語っておられましたが確かにそんな雰囲気がありました。その後の私はさしずめ『出来の悪い門下生』といったところです。
by shim47 (2009-10-18 13:20)