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LIve at Cafe Bohemia/George Wallington (ライブ・アット・カフェ・ボヘミア/ジョージ・ウォーリントン) [音楽のこと(レビュー紛いの文章)]

 音楽聴き生活ももう40年近くになろうとしているので『もう長いこと』という枕詞を頭にくっつけても許されそうに考えているのだが、評価に困るレコードに出くわすことも勿論あって、ふと思い出したのがLIve at Cafe Bohemia/George Wallingtonカフェ・ボヘミアのジョージ・ウォーリントンというレコードの事だ。


 
ライヴ・アット・カフェ・ボヘミア

ライヴ・アット・カフェ・ボヘミア

  • アーティスト: ジョージ・ウォーリントン,ジャッキー・マクリーン,ドナルド・バード,ポール・チェンバース,
  • アート・テイラー
  • 出版社/メーカー: ユニバーサルクラシック
  • 発売日: 2009/06/12
  • メディア: CD
 良い音楽だと思う。
但し、主観の問題なのだろうが『魂を鷲掴みにするような』というほどの圧倒的説得力を持って迫ってきたことはない。
活発なハード・バップであり好演ではあるが私にとってはどう聴いてもそれ以上ではない。
 しかし本作は一時、好事家の間では燦然と輝く歴史的名盤との評価を受けていたので私の主観とはかなりのギャップがある。
この手の話題は枚挙に暇がないほどそこらへん中に転がっている話だ。
 理由の第一は本作が最初、プログレッシブという極めつけのマイナーレーベルからリリースされていたため、
出回り数が極めて少なかったことに由来しているのではないかと私は想像している。後にこのバンドはプレスティッジと契約し、
アルトサックスはジャッキー・マクリーンからフィル・ウッズへとメンバーチェンジすることになるのだが、リスナーの中には
『今のバンドも良いけどアルトがジャッキー・マクリーンだった頃にはもっと良いバンドだったんだぜ』という御仁もおられた
のではなかろうか。
その手の物言いは結構ありがちではないだろうか。

 しかしそういった言い分の根拠となるべき記録はプログレッシブという頭に”ど”がつくほどの
マイナーレーベルにしか残されておらず、入手が大変困難である。アルトサックス二人を比較すると、
日本ではどちらかというとフィル・ウッズよりもジャッキー・マクリーンの方が
人気があるように私は見ているのだが、そうだとすればいかにも出てきそうな蘊蓄話ではある。
 本作の物凄く高い評価は、希少性が評価に物凄い尾ひれをつけた結果ではないかという味方を私はどうしても払拭しきれないでいる。
繰り返すが、好演ではあるのだが。これが評価に困ったことのうちの一つだ。

もう一つは私の諦めの悪さというか、一種のスケベ根性に由来するちょっとした無駄遣いに関してだ。 
数十年前にはびこった『幻の名盤』ブームのうちでも本作は目玉中の目玉だったと私は記憶している。
ジャッキー・マクリーンは私も結構好きなプレイヤーなのでテイチクから再発された廉価盤には一も二もなく飛びついた。
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 音楽そのものに対する私の評価は最初に書いた通りである。正直言って肩すかしを食わされた気分になった。
しかし本作についてはある種の噂がまことしやかに結構方々で囁かれた。それはどういうものかというと、
再発盤’に収められている曲は全て
別テイクであって、元々の初回リリース盤のマスターテイクこそがこの上なく素晴らしい、との伝聞だった。
 私が雑誌で見た本作のジャケットは冒頭、Amazon.comのリンク画像で示したように薄い青緑のような色だった
という記憶は残っていたので私の買った赤いジャケットの再発盤は音源の散逸が結構著しいらしいプログレッシブのことだから、
一種のピンチヒッターとしてリリースされたのだと
勝手に思い込み、幻はどこまでも幻として保存されていくのだろうかと益体もない妄想に耽った。
 但し私には金にあかせて高価なオリジナル版を蒐集する趣味はないし、そうしたいと思えるほどここでの音楽には
強い印象を受けることもなかった。

 それから数年後、LPレコードの時代もそろそろ終わりかという頃に日本ではビクターから本作が再発されたのだった。
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 ジャケットデザインが違っているので私はこの時の再発盤こそがマスターテイク集ではないかという考えに取り憑かれた。
そろそろLPレコードは市場から姿を消してしまい、これから先はCDに取って代わられることが明らかな時期だったせい
もあって私はさして思い入れの深い音楽でもない本作を餌箱から引っこ抜いてカウンターで財布を開いていた。

 自宅に持ち帰って数年前に買ったテイチクからの再発盤と収録時間を比較してみると確かにどの曲も僅かずつ演奏時間は
異なっていた。
しかし悲しいかな、私の粗雑な記憶力ではどう聴き比べてもどちらの盤もおんなじにしか聴こえないのだった。
果たしてそれぞれ、ジャケット裏に記載されている演奏時間と実際のそれとが同じであるかどうかをストップウォッチ
片手に検証するほど私は生真面目なリスナーではないせいで、本作の評価はそのうちどうでも良くなった。
 正直なところ、ドナルド・バードにせよジャッキー・マクリーンにせよ、本作の参加メンバー全てについていえることだが、
ここでのライブ・レコーディング以上の成果を上げた記録は他にも少なくないと私は見ている。

 結局のところ、別テイク云々の噂話と変更されたジャケットデザインに踊らされて私はレコード一枚分の無駄遣いを
したらしい、という顛末なわけだが、こうしてネットを活用出来る便利な時代になったので、
ヒマを見ては本作のマスターテイクと別テイク云々のことを調べてみようかとも思うのだが、
いっぽうでそんな不毛なことに時間を費やす気にもなれないという考えもあって結局本作
はいつまで経ってもモヤモヤした評価に覆われている。そのモヤモヤ具合こそが『幻の』名盤たる所以なのかもしれない。 

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