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休日にレッドクリフを続けて見る [映画のこと(レビュー紛いの文章)]

 私事だが、ここしばらく身辺に色々と変化があってきっと大きな転換点の中にいるのだろうと思う日々が続いています。

 私自身の人生模様などというものは他人様の視点から見ればとるに足らないような、それこそ小さな小さなものでしかないのだが本人の時間軸でいえばそれなりのドラマツルギーのようなものはやはりあって、主観的には何やら大きな物語の中の出来事になぞらえてみたくなるような局面も散発する。

 一生の中で経験する読書体験の中には大きな物語世界に没頭して何日も過ごすことがあって、それが自分の世界観や人間観の背骨の形成に影響するようなことはやはりあるように考えている。私の場合は父の持ち物だった本の中の一つにそれがあるのだとある頃気づいた。
新装版 三国志〈1〉 (講談社文庫)

新装版 三国志〈1〉 (講談社文庫)

  • 作者: 吉川 英治
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/10/15
  • メディア: 文庫
 読みふけったのは少年期から青年期にかけての時期だったが、その後、横山光輝の漫画などでも読み返してみたことがある。陳腐な言い方しか出来ないが、自分を取り巻く世界の動きというのは多くの人たちの色々な思惑が絡み合いながら紡ぎ出され、展開されていくものだというありようをどこかで知っておくべきであって、その疑似体験として出来れば人格の形成期に壮大な群像劇を通読しておくのはよいことだと思う。
 いずれ時間を見つけて、また通読してみたいと考えている。

 物語それ自体のことは更に色々思うところもあるがそれはまた別の機会に譲るとして、三国志が映画化されるなどということをこれまで想像したことはなかった。この映画のことを知った時に、それが物語の中の一部分を抜き出したものに過ぎないにせよ果たして映画の時間枠の中に収まるものなのかどうかを疑問視していたがやはり前後編2部に分かれる、少なくとも鑑賞時間だけで言えば『大作』である。

レッドクリフ Part I スタンダード・エディション [DVD]

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  • 出版社/メーカー: エイベックス・マーケティング
  • メディア: DVD
レッドクリフ Part II -未来への最終決戦- スタンダード・エディション [DVD]

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  • 出版社/メーカー: エイベックス・マーケティング
  • メディア: DVD
 色々事情があって劇場公開は見逃した。ビジュアル的には相当派手な作りなのでやはり、非日常の場所で見ておくべきだったと少々反省している。

 私はだんだん年寄りの範疇に入りつつあるからなのだろうが、若い頃の読書体験も相まってどうもこういう造りにはあれこれと難癖をつけたくなるようだw
 性格もだんだん屈折を深めつつあるということだろうか。 

 総体の印象としては、当然ながら商業ベースの娯楽映画なのでわかりやすい世界観で製作しなければならないのは仕方がないにせよ、何とも即物的にして直線的な出来だなあ、というのが見終わっての印象である。今日日、ハリウッド映画として製作するには多くの登場人物が権謀術数の限りを尽くすことで織りなされる錯綜した人間ドラマ(物語の本筋は明らかにそこにあるはずだと私は覚えているので)としてよりも切ったはったの、ぶったまげるような絵面と度肝を抜く轟音が続出する一大スペクタクルアクションであることに力点を置くのがセオリーなのだろう。
 大金を投じて製作し、多くの観客を動員することで投下資本の回収を計り、はい、収支決算でこれこれの利益を得ました、という枠組みの中で製作される映画とはこういうものだとあらためて実感出来るジェットコースターみたいな映画である。

 原作の物語世界についての予備知識がなく、単に二時間強の時間を消費する娯楽としてこの映画を見る人たちのことを念頭に置かなければならないのでこういう造りは仕方がないのだろうが、登場人物を善玉と悪玉にきっちり切り分けた上で周瑜の妻の身柄奪回ドラマとはまたなんとも矮小化の度合いが激しい。更にいえば孔明が単なる頭の切れる軍師様程度の描かれ方でしかない点も名前の一文字を頂いた私としては心情的にはなんとも寂しい。 
 まあグダグダと小言幸兵衛よろしくケチを付け始めればきりがないのだが、レンタルDVDでの話なので全編後編併せておよそ4時間強を消費する娯楽としてはこれが妥当なのだろうとここでは割り切ることにした。良くも悪くもハリウッド映画といったところだろうか。

 そんなわけで映画についての印象はあまり強いものではないのだが、三国志演義に基づく吉川英治版を再読したくなった。出来れば三国志正史に基づくのだそうだが北方謙三版も機会があれば読んでみたいような(二つ通読するにはどれくらい時間がかかるのかと思うと何だか途方もない気もするが)読書意欲が湧いてきた。

 映画を見通すことによって観客の中に湧き出してくる副産物としての欲求が、その映画を見にもう一度劇場に脚を運びたいのではなく原作を文字として読み通してみたいというのは、総合表現を売り物にする立場としては敗北宣言みたいなものではないかと私は思うのだが、所謂ハリウッド映画というのは恐らく、百万人の人に十回見てもらいたいわけではなく一回見るだけでいいから一千万人動員させたいのが製作上の大前提だろうからここから先は議論は成り立たない。まあ、どうでもいいのだけれど。

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