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Spritual Unity/Albert Ayler(スピリチュアル・ユニティ/アルバート・アイラー)その2 [音楽のこと(レビュー紛いの文章)]

 本作については2年ほど前に自意識の垂れ流しのような駄文を恥知らずにもアップした事がある。

http://r-shim47.blog.so-net.ne.jp/2007-11-06

 全くもって我ながら、よくもまあこんな独りよがりな自己告白をぶちまけたものだとは思うが、それくらい骨の髄まで染み付いた音楽のうちの一つだという事は間違いない。「人生の節目にさしかかったところで意識の中に鳴り響く音楽」のうちの一つでもあるのも未だに変わらない事を正月休みのうちに聴き直してみて再確認出来た。

Spiritual Unity

Spiritual Unity

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Get Back
  • 発売日: 2005/03/15
  • メディア: CD

 学理楽典の知識など全くない私だが、拙いながらも音楽そのものについては何か書き残しておきたいので再度取り上げたくなった。

 これまであまり気にした事はなかったのだが、兵役中にはアーミーバンドでの演奏が役務だったアルバート・アイラーは決して何の音楽的背景もなしにいきなり現れた前衛坊やではない。そして1963年までの間はヨーロッパでの演奏活動ばかりなのだが記録されているブローイングはどれも既に先人の影響を断片的に垣間見せながらも所謂バップ調を飛び越えたものだ。 一体いつ、どのようにしてこういう演奏スタイルに関心を持ち、身につけたのだろうか。除隊した時期は1961年でありそれまで3年間の間、勤務地はパリだ。時系列で言えば、かのオーネット・コールマンの一党がNYに進出してセンセーションを巻き起こしていた頃とやや重複するのだがそれぞれ住んでいる土地は大西洋を挟んで遠く隔たっている。アイラー本人は生前、こういった事に関して全くコメントを残していないらしく、今となってはどうにも確認のしようがない。

 


 冷静になって聴いてみるとGhostなどでは特に顕著だが、テーマは4/4で演じられているし、リズムセクションの挙動はビートの山を微妙にずらしてメロディーラインを紡ぎ出していくアクセントのつけ方に対して終止正確にカウンターを返していく補完機能を果たしている。シンバルのレガートが人的な挙動としては殆ど限界近くにまで細分化されているのでちょっと聴きにはフリーリズムであるかのようだが案外そうでもない。

 

 最終曲であるGhost (Second Variation)にはソロの最中に2曲目The Wizradのテーマ部分が織り込まれる。もう一つ、初回リリースされたプレスに収録されているSpiritsの別バージョン(演奏内容は全く別の同名異曲)にはソロの最中に今度はGhostのテーマが聴き取れる。だから収録されている各曲には何かしら他の曲を暗示させる断片が埋め込まれており、それぞれに関連性がある。つまり本作は2テイクのGhostにサンドイッチされた関連する他の二曲からなる合計4パートでひとつながりといった風に全体の枠組みが予めかなりみっちりと構成されており、決してその場の思いつきで垂れ流された音楽を並べただけのものではない。

 これまで何度も何度も針を降ろし(CDでも買い直した)て、その都度薄々気になっていたのだが、アルバート・アイラーの音楽はどこかでディキシーランド・ジャズに結びついている。ディキシーの楽器編成にサックスは殆ど見られないがむしろ例えばバンク・ジョンソンのようなトランぺッターと共通するバイブレーションに聴こえるのは私だけだろうか。スイングもバップも素通りしてディキシーが別の方向で変化していった場合がアルバート・アイラーなのではないかと聴き返す度に思う。


 生かじりの理屈のような話はボロが出ないうちに切り上げるとして(汗)、本作のジャケットデザインを私は大変気に入っている。ESPレーベルでリリースされたもののうち殆ど唯一、アートとしての価値がありそうな装丁だと私は素人ながら大真面目に捉えている。悲しいくらいに無防備で生々しい感情が波打つこの音楽を絵として表せばこうなる意外にはなかったとさえ思える。

 

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  余談のような事を書き連ねていくときりがないのだが、アルバート・アイラーの命日である1970年11月25日はあの三島由紀夫が割腹自殺を遂げたその日でもある。それぞれには勿論何の関連性もないのだが私としては何か、意識の中で暗く符合するものがある。何かしら私の人生そのものに根深いところで絡み付いている音楽なのでいずれまた何か書き足したくなるかもしれません。


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