The Return of the 5000lb Man/Lasaan Roland Kirk(邦題:天才 ローランド・カークの復活) [音楽のこと(レビュー紛いの文章)]
私の身辺には病に倒れる同級生がぼつぼつ現れ始めてきている事はこれまで何度か書いた。 昨年だけでも脳関係で二人いた。一人は脳梗塞で幸い目立った障害は残らずに日常生活を送っているがもう一人は脳出血で現在リハビリ中だ。こちらも入院当初から見ると随分身体機能は回復してきたがまだまだ復旧途上の感がある。
脳障害から奇跡の復帰を果たしたミュージシャンだからというわけではないが、不意にローランド・カークが聞きたくなった。
The Return of the 5000 Lb. Man
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: Collectables
- 発売日: 2005/06/28
- メディア: CD
左右どちらかは忘れたが半身不随の障害が残ったままでの再起第一作である。当然ながら複数のリード楽器をくわえて同時に異なるメロディーラインを吹くというかつての異能ぶりはもう披露する事が出来ない。がしかし、プレイヤーとして負ったハンディを跳ね返すかのようにここでの表現世界は物凄く豊穣である。事故なり病気なりといった音楽そのものとは直接関係のない背景を抜きにしても本作は見事な個人史の総括でありブラック・ミュージックの再解釈として瞠目すべき成果を上げた。
音楽の傾向としては全く異なるが、似たような状況下で製作された傑作
- アーティスト:
- 出版社/メーカー: Domino Records UK
- 発売日: 2008/10/28
- メディア: CD
私は以前、Rock Bottomについて今となってはこっ恥ずかしい限りのしょうもないテキストを垂れ流した。
どちらも私自身の個人史と重なるところがあるせいで大変思い入れが強いのだろう。
最終曲がコルトレーンのGiant Stepsだというところに私は何か、大きなメッセージが込められているのではなかろうかと毎度聴き終える度に思う。病気なり事故なりによって身体的ハンディを背負い込んでなお、時にそれを逆手に取って人は表現者として成長し、成熟していく事はあるのだ。
だから身の上にどんな災厄が降り掛かろうとも決して自分に絶望してはいけない、と、筋違いではあるけれど私は結構浪花節的な感慨に耽る。
(追記)拙いながらも音楽そのものについて何かを書き留めておきたかったのだがテキストを書いている最中にいきなりブラウザが落ちて私の駄文はパーになった。だからこのテキストは途中から書き足したものだ。元々値などないテキストなので悔しがっても詮無い話だが時間と労力が一瞬で消滅するとやはり無力感に捕われて少々凹むが、気を取り直して本作の事をもう少し何か垂れ流してみたい。どちらの作品も大変肯定的なフィナーレで終わるところに私のような者であっても何事かを継続する力を与えられていると思いたいので。
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