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Loving you/MInnie Riperton [音楽のこと(レビュー紛いの文章)]

 あまたあるポップチューンのエバーグリーンの一つにこの曲は当然入っているものと私は決めつけている。 聞いていて少々こそばゆいような気分を喚起させられるがそれは親父の照れというものだ。歌詞の内容を私は未だに知らないがそれが恋愛にまつわるある場面や気分の事だというあたりまでは察しがつく。だからそのこそばゆい気分は何か恋愛感情に裏打ちされた記憶や想像に根ざしてもいるわけだ、やもめ暮らしの私ではあるがそんな経験がなかったわけでもない。 ともあれ名曲であり、名唱だ。言葉の壁を越え、理屈抜きでいつの時代にあってもビューティフルな音楽がここにも一つある。


 

 確かミニー・リパートンはソロシンガーとして独立する以前にはスティーヴィー・ワンダーのバックコーラスを務めていたと何かで読んだ記憶があって、かの国の音楽シーンがいかに分厚い層を成しているかがよくわかる。

 デビュー曲からしてこの出来である上にその後彼女は将来を大いに期待されながら夭折してしまった。実働2年か3年の短い栄光である。だから実質、この一曲だけでミニー・リパートンは多くのリスナーの記憶にとどまり続けていて未だにその無垢な輝きはいっこうに減じられる気配がない。事実は小説よりも奇なり、という事か。音楽の背景めいた話題は別にしても、これを聴いて何も感じないような輩はもう、音楽になど一生縁を持つ必要はない。

 音楽そのものの色合いや歌世界の完成度に加えて悲劇のヒロインとしての神話性までがついて回るのだからこういう曲をカバーするのはなかなか勇気のいる事ではなかろうかとここでまた私は余計な勘ぐりを入れたくなるが少々調べてみるとさすがに名曲だけあって随分色々なシンガーによってカバーされているようだ。但し幾つか聞いてみた限りでは大体誰もがいかに忠実な物真似を演じるかというアプローチのようで神話性とはそういう事なのだ、というのは確かに一つの落としどころたり得る。

 しかし私はここで、先日持ち出した本作の事を書いておきたい。

The Return of the 5000 Lb. Man

The Return of the 5000 Lb. Man

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Collectables
  • 発売日: 2005/06/28
  • メディア: CD

  残念ながら私は動画を見つけられないが(あったとしての話だが)、本作中でLoving Youはカバーされている。勿論それはオリジンで聴かれるように可憐な風情をたたえた情緒連綿たる歌唱では全然ない。ノーズフルートとだみ声で途切れ途切れに奏でられるどす黒く、ひずんだ世界は本家本元とは全く裏返しに位置するといっても良い程にかけ離れた演じられ方ではある。しかし何故かここでのこのカバーは、どんなに忠実度の高い物真似カバーをも飛び越えて強烈にリスナーを捉えるだろう事を私は確信する。自分が自分である事の徹底的な立ち位置から発せられた、本歌とは似ても似つかないこのカバーにこそ本歌と比肩出来そうなくらい魂の根っこから湧き出してくるような何かが確かにある。

 本歌とは異なる色合い、というのはつまり異形の者に注がれる無遠慮な視線を弾き返して屹立する精神の強靭さであるように私は捉えている。誰でも内奥には何かしらハートフルな世界をとどめている。 リスナーをしてそう思いたくさせずにはおかない何か強烈な訴求がここには確かにあるのではないか。


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