セシル・テイラーの動画 [音楽のこと(レビュー紛いの文章)]
これまで長い事、音楽はもっぱらLPやCDなど、音だけを通じて接してきたわけだがこうしてパソコンを手に入れてネット上の動画をあれこれ眺める事が出来るようになるとそれまで曖昧にしか規定出来なかったものの姿がもっとはっきり見えてくるようになってきた。
セシル・テイラーのピアノは以前から大好きでレコードも結構聴いたが、リラクゼーションを求めてのことではなかった。むしろその反対で、例えてみると果たし合いの現場に居合わせて成り行きを固唾を飲んで見守る風の時間が多かったように覚えている。
ある時、セシル・テイラーはクラシックバレエに造詣が深く、自らも少々嗜むらしいと何かで読んでから少し見方が変わった。
動画を見ていると尚更そう思うのだが、この人の演奏は何か、舞踏を音に翻訳していると捉えるのが一つ、接し方の作法のような気がしている。
考えてみるとあまたのジャズ・ピアニストのうちこの人くらい多彩なキータッチを使い分けるプレイヤーは他にいないように思えている。漂うような軽さからキーを叩き抜く程の激しさまでを十全に捉えきった録音は全くと言っていい程ない。
オーディオ評論家菅野沖彦が現役のレコーディングエンジニアだった頃のアナログ録音で私の愛聴盤。演奏家と録音技師のデスマッチみたいな音楽である。勿論、音楽そのものも実に毅然としてカッコいい。
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