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HALF and HALF(1) [嗜好品(喫煙関係)]

 ピザハットの話題ではなく、私の嗜好品である。

 欧米に比べればまだまだ規制は甘いとは言え、愛煙家にとっては受難の時代である。私の住んでいる町に2件ばかりあった所謂スモークショップはここ3年ばかりの間に店をたたんでしまい、大変寂しい気分を噛みしめたものだ。

 日頃吸っている銘柄は特に不便もなく手に入るが、時たまパイプでもいじってみようかと思うと最早私の住んでいる田舎町では店頭に売っていない。注文して取り寄せてもらうことになるのだそうだ。何とも不便きわまりない話で、加えて生来のものぐさが祟って予め注文して手元に常備しておく習慣がまだ出来ていない。だからだんだん面倒臭くなってパイプに手が伸びる頻度が低下する結果となる。人生の楽しみのうちの一つをみすみす放棄していることになる。

 そもそもが嗜好品なのだから、それが欲しければ幾ら世間の仕組みが変化して手に入りにくくなろうが横着をせずに調達する努力をすれば良いではないかというご叱責がどこかから飛んでくるのだろうが、こと煙草に関する限り、私は自分にとって都合の悪いことは全部他人や世間のせいにするという鋼鉄の如き信念を堅持している。

 たまにパイプをいじるときの定番がHALF and HALFだった。シナモンフレーバーは結構私好みだ。パイプ煙草に関して、私はどうも英国系は苦手で米国産の軽めのやつか大陸系に食指が動く傾向がある。
 
 それまで贔屓にしていたスモークショップではいつも店頭にあった。比較的ポピュラーな銘柄なのだろう。そういうものさえ今では注文しないと手に入らないようで全くイヤな時代になった。

 この銘柄を私は今から30年近く前、未成年の小僧の頃に偶然知った。但し、パイプ煙草ではなく、紙に巻いたシガレットとしてである。封を切るとシナモンの強い匂いがして煙草というよりもお香のように思えた。葉の色が濃く、火をつけてみると何ともエキゾチックな気分に浸れた。俗ではあるけれど「大人の香り」とでも言おうか。
 どうも私は何事につけ、シナモンの香りに弱い性質があるらしい。日常接するあれやこれやもシナモンの匂いがすれば条件反射的に飛びつく性癖があり、マタタビに吸い寄せられる猫の心情は実によく分かる。尤も、そんな様子を目撃したことは今まで一度もないが。

 いっそそれまで吸っていた煙草の銘柄を買えようかと思うくらい私は気に入ったのだが、残念ながら当時、輸入煙草は高価だった。ホープ10本入りが二箱で120円だった頃、これら所謂洋モクは何と260円もしたのである。
 加えてこれら洋モクは、街中のデパートにテナントとして入っている、例えば専売公社直営店みたいなところでしか売っていなかったのでわざわざ買いに行くのも面倒臭く、万年金欠だったこともあり(ここは今でも一緒)そのうち何となく普段の銘柄に戻った。

 それからうんと時間が経って、国内製の煙草と輸入品の値段が変わらないくらいにまで接近してきたある時、私はパイプをいじり始めるようになっており、このHALF and HALF という銘柄が実は元々はパイプ用のものだったらしいことを知った。
 パイプ用に刻まれたHALF and HALFは、なるほどこちらが本家だと言うだけあってシナモンフレーバーはなお一層鮮烈だった。大して利きもしない鼻をクンクンと蠢かせては部屋の残り香を嗅ぎ、『うーん、これが本当の愛煙家というものだぜ』と、ひとりやに下がっていた(我ながらくだらない駄洒落だ)束の間の幸福だったが長くは続かなかったのであります。(以下続く)
 

 


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