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面妖なる踊りと糞飯(敢えて誤字)モノのパフォーマンス(1) [身辺雑記]

 日頃愛読するホームページに「モーレツパンチ」がある。
http://mo-retsu.jp/

 読みどころは満載だが、そのうちのひとつに「うんち君のこぼれ話」というのがあって、毎度ながら楽しく読ませて頂いている。
http://mo-retsu.jp/unchi/index.htm
 それに触発されたのかどうか自分でもよく説明できないのだが、尾籠な話や下ネタならば私にも心得がなくもないのである。私は毎度、このホームページを訪れるにつけどうしても思い出さずにはいられない人物が一人いるのだ。

 件の人物とは私が中学生だった頃の同級生だが、彼の名誉のためにここでは身元を明かさない。下のイニシャルだけを拝借してK君とここでは記述する。K君の人生模様はまさに波瀾万丈であり事実を追っていくとベストセラー間違いなしのノンフィクションが一冊できあがるのだが、長くなりすぎるため、ここでは子細をつまびらかにはせず、出来事を二つばかり。

(その1)私が中学生の頃、ステレオ再生装置がかなりのブームだった。音楽を聴くのが習慣である人たちが周辺にそう沢山いたとはどうしても思えないのだが、何しろ猫も杓子もがこぞってステレオを買い込んだ。大半は居間の調度品として沈黙を続けていた様子だったが、持ち主の接し方などはお構いなしで、ステレオ小僧だった当時の私は同級生の誰ぞの家でステレオを買い込んだという話を聞きつけるや自分のレコードを携えてその家に上がり込む厚かましい坊主だった。
 で、同じく同級生の某君の居間でのこと、そこには某君と、K君と私の3人がいた。居間には買ったばかりのステレオがあり、私はこういうレコードを抱えていた。

Freak Out!

Freak Out!

  • アーティスト: The Mothers of Invention
  • 出版社/メーカー: Video Arts
  • 発売日: 1995/05/02
  • メディア: CD

 某君自身は、自分の小遣いでレコードを買ってくるところにまでは至っていない。居間には父君の持ち物であるところの「炭坑節」とか、田端義男の「帰り舟」とか、そういう種類のドーナツ盤が幾らかあり、私達は父君のコレクションを聴き始めた。
 K君は幼少の頃より傑出したパフォーマーであり、ここでは「炭坑節」が興味をそそったようだった。彼はすぐさまソファから立ち上がり、サビのあたりを歌いながらけったいな踊りを始めた。私と某君はそれを見て腹を抱えて笑った。「炭坑節」はレコードで聴いているよりもそちらの方がおもしろかった。

 「炭坑節」でひとしきり盛り上がると、次に聴くものはというと私が携えてきたフランク・ザッパしか残っていなかった。某君とK君の二人は聞いたこともないミュージシャンの名前に怪訝な顔をした。「ザッパ!」奇声を上げた二人はジャケットをのぞき込んだが、書かれていることは全部英語なので私同様、内容はさっぱり分からない。
 とにかく聞こうやということでTrouble every dayから聴き始めた。最初のうち、お二人はせっかく持ってきたレコードなんだから真面目に聞いてやるふりでもしようかとでも配慮してくれていたのだろうが、英語の歌を聴く習慣のない彼らはものの数分と経たないうちに退屈してもうレコード聞くのはやめようぜと言い出した。
 ステレオの音量を下げずに大声で雑談しているうちに、次の曲、Help I'm a rockが始まった。「何だこりゃあ」雑談を中断した二人は再度怪訝そうな顔つきになった。
そのうち段々、K君の目は異様な光を帯び始めた。「おまえ、なんだこれ」K君は私を肘でつついた。いいだろ、と私が言うとK君は「よくねえっ!いいわけねえべやっ!」(北海道弁です)と喚いた。
 音楽がK君の何かを喚起したようだった。K君は鼻の穴を膨らまし、弾かれたように立ち上がると猫背の上半身をくねくねと蠢かし、奇声を張り上げながら何とも面妖な踊りを踊り始めたのだった。
 「う、うぁは、うぁはははははは!」
 私と某君の二人は腹筋がちぎれそうなくらい笑った。後にも先にも踊りを見てあれほど笑ったことはない。笑いすぎて窒息しそうなくらい笑った。
 「どら!」と、K君の発するオーラに呼び込まれるようにして某君が踊りに加わる。どこかぶっ壊れた空気が一気にヒートアップして、こともあろうにこの私までもが加わり、三人三様のデタラメな踊りが繰り広げられた。
 そうして片面が終わり、調子づいた私はレコードをひっくり返した。
一時の沈黙でさめかけた熱気が再び盛り上がった。某君は煎餅の空き缶を取り出してきて棒で打ち鳴らして調子をとる。K君は曲の間合いを見計らって思い切り大きなアクションででっかい放屁をかます。

 狂乱が最高潮に達したあたりで壁を激しく叩く音がして私達は我に返った。居間の入り口には学校が終わって帰ってきた某君の姉君が憤怒の形相物凄く仁王立ちしていた。
「あんたたちっ!何なの!何なのさ、このキチガイみたいな・・・・・!!!」姉君は激怒の余り言葉に詰まって後が続かない。後になって知ったことだが、家の前10メートルくらいから、モンスター・マグネットのばかげた騒乱節がはっきり聞き取れたのだそうだ。何事かと思って姉君が駆け足で家に飛び込んで目にしたのは居間で浮かれた痴呆ダンスを踊る弟とその同級生の姿だったわけだ。
 それで姉君は一瞬、居間のステレオが鳴らしている音楽に注意を傾けるやいなや、
「やめなさいっ!こんなキチガイみたいな音楽は!」と一喝するやどすどすとステレオに歩み寄っていきなりアンプの電源を乱暴に切った。(実に情けない終わり方をするので機会があれば試してみて頂きたい)
 某君を含めて私達3人はそのようにして某君宅から叩き出された。

 泡を食って飛び出してきたので私はレコードを持ってくるのを忘れていた。数日経ってから某君宅にレコードを取りに行くと、居間のステレオの脇に、姉君のものとおぼしきレコードを見かけ、凝視してみるとサイモンとガーファンクルだった。確かにそういう種類の音楽を愛好する人にとってはザッパの音楽なぞ汚らわしい以外の何者でもないかもしれないと考えたりもしたのだった。(続く)


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