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The Great Dictator(独裁者/チャールズ・チャップリン) [映画のこと(レビュー紛いの文章)]

 先に、「フルメタル・ジャケット」について、それが単なる戦争映画としてカテゴライズされるべきなのだろうかという疑問を私は書いたのだが、逆の意味でこちらは単なる喜劇映画としてくくられて良いのかとも思う。

独裁者 コレクターズ・エディション

独裁者 コレクターズ・エディション

  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • 発売日: 2004/03/21
  • メディア: DVD


「戦争映画」というカテゴリーを私は疑問符付きで受け止めるのだが、本作は立派に戦争映画たり得ていると思うのだ。

 言うまでもない歴史的名作であり、今更私ごときが能書きを垂れるまでもないのだが普遍的に素晴らしい心のありようの一つがここにはある。
 総体の出来として、ラストの歴史的な演説シーンはいささか取って付けたような唐突さはあるが、ストーリーの統一性を犠牲にしてでもやはりチャップリンはこれを語りかけずにはいられなかったのだろう。何かをする勇気も何かを抑制する勇気も人にはあると思いたい。昨今、色々ときな臭い世相であるだけに余計そう思う。

 そこいらへんのドラッグストアやら何やらで本作をたったの500円で買うことができるのは実に有り難いことだ。本作は一家に一枚あってほしい。そして一人でも多くの人がいつか、どこかで見てほしい。人生時間のうちのたった2時間を割くだけでかくも崇高なメッセージを私達は受け取れる。その環境に関して言うならば現在の有り様は悪くない。世の中イヤなことばかりでもないのですね。

 但し、すれっからしの大人として一言こっそり余計な独白めいたことを書かせて頂くと、世界中どこを探しても、100%の善も100%の悪もないと私は考えているので、登場人物の性格づけ(ということはとりもなおさずヒトラーの)は極端に過ぎるとも思えなくもない。勿論ヒトラーやナチスドイツの所行がいいことだったなどとは全く思わないが、人や歴史は多方面からの検証が必要であり、それらを総合すれば浮かび上がってくるのは利害や善悪が複雑に入り組んだ様々な人間それぞれの実相であるはずだ。
 とは言え、本作についてそのような人間観をもってして否定するつもりは全くない。最後の演説シーンを際だたせるためにチャップリンは敢えて極端な作為を施したのだろう。単純なヒューマニストでないことは他の諸作が十分証明している。
 それら全てをふまえた上で、こういうメッセージをスクリーンから語りかけることのできたチャップリンはやはり偉大な人物だったと、いかにもなオチである。
 
 


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こぶし

私、この記事を読んで、ワンコインのDVD買いました。
すると、500円をさらに1割引セールでしたので、449円でした。
独裁者は見た事がなかったので、こりゃあ見なきゃいけないと思いまして、ただいま見終わったところです。
チャップリンのコメディが、欽ちゃんとドリフに与えた影響はこれほどまでだったのかと(ほとんどそのままのパクリがいくつもある)驚きました。
それにしても最後の演説シーンは、襟を正し、正座して神妙に見ざるを得ないような、重厚で本当に魂のこもった素晴らしい内容でした。
でも、結局世の中は良くならず、映画で何を訴えたところで、なんの役にも立たないのだ、という意見もありそうですが、そんなこたあない。
この映画がなければ、人類の今はもう少し悪くなっていたに違いない。
そう思って、やはり我々は前向きに努力して行かなきゃならんのだと思います。
偉大ですね、チャップリン。
大尊敬しました。
by こぶし (2006-11-04 00:17) 

shim47

 どこかの学校でこの映画を上映したとき、終了後に全員が立ち上がって拍手したという話をなにかで読んだことがあります。そんなエピソードを知ると、人はまだまだそう捨てたものでもないと思ったりもします。
 しかし一方で、無用に人の好戦的な意識の扇動を目的としているかのような映画もあり、私達はそこにあるべき魂の存在を見分ける眼力を持つ必要がありそうにも思います。劇中の演説にあるとおり、民主主義の敷衍のため、という大義名分がいかに多くの砲弾で多くの人の命を奪ったかを私は改めて考えてみたいのです。
by shim47 (2006-11-07 00:08) 

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