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Blood on the tracks/Bob Dylan(血の轍/ボブ・ディラン) [音楽のこと(レビュー紛いの文章)]

 私の住んでいる土地はめっきり冬になった。外を歩けば風が痛い。生活習慣と言って良いのかもしれないが、冬の入り口にさしかかると毎年ボブ・ディランを聴きたくなる。

血の轍

血の轍

  • アーティスト: ボブ・ディラン
  • 出版社/メーカー: Sony Music Direct
  • 発売日: 2003/11/19
  • メディア: CD

 初冬の冷たい風、煙草、薄曇りの夕方、安酒、くたびれたコート、「風に吹かれて」というタイトルの曲があるように、ボブ・ディランの音楽にはいつもそういう連想が働く。

 70年代半ばになってようやくエンジンが掛かり、再起動し始めて本調子が出てきたボブ・ディランの本作は失恋の歌ばかりを集めたちょっとヘビーな内容のものだ。
 この頃、実生活に於いても奥さんのジョーン・バエズと離婚し、その時点での心象風景が反映されてこういう作風になったのかどうかは不明だが。

 人生、もしもやり直しがきくものなら、と詮無い空想を働かすとき、三行半を叩きつけて去っていったかつての恋人とよりを戻すことができればいいのにと思う諸兄は決して少なくはないはずで、かく言う私もそのうちの一人です。
 そういうときに聴く本作は、かなりこたえる内容だ。未練とか辛さのやり過ごしが実に赤裸々に歌われる。そういう感情はしばしば文学的に昇華された文章となるが、ここでも重い歌詞となって結実している。

 そういう心の有り様を、しばしば他人は女々しいとか後ろ向きだとか言っていらぬハッパをかけてくれるものだが、人間そういつもいつも元気ばかりではいられないものではないのか?だから、強さや逞しさが必ずしも絶対的な美徳だとは思わない私は時たま本作を引っ張り出してはかつての自分の姿をそこに見る。誰かに去られた後に抱え込んでいた孤独を色々な角度から見てみるのである。情けなくもみっともないが、だからといって時間は戻らず、他の誰かになれるわけでもないとグジグジしているときの自分にも案外多少はいいところがあると思いたいんですよ。
 
 ザ・バンドとのコラボレーションとはうって変わって本作のバックをつけているのは無名のミュージシャンばかりなのだそうだが、地見目のバッキングがもたらす沈静した感じの曲が個人的には好きである。特にベースの柔らかく厚みのあるトーンがお気に入り。

 
 


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