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Return to Forever Live/Chick Corea(リターン・トゥ・フォーエバー ライブ/チック・コリア) [音楽のこと(レビュー紛いの文章)]

 どこかでムキになっている自分が本当にアホに思えるのだが、昨日、コルトレーンのライブを途中で放り出してから思うところがあったので、今度はもう少し口当たりがいいはずのチック・コリアである。同じくボックスセットのライブを引っ張り出してきた。1ステージの最初から最後までがノーカットで収録されているという点は共通している。

 もう一つの共通点は、いずれも奥方様がプレイヤーとしてステージに上がっている点だが、正直言って奥様はどちらも才能に恵まれているとは言い難いという更なる共通項もある。
 表現行為はその人の主観に基づくわけだが、幾ら奥方を溺愛していたにせよ、行きすぎた枠組みはいい結果をもたらさないことはやはりある。身びいきの度が過ぎて奥方が単なる騒音発生器だったり脚の引っ張り役立ったりする格好の例を私は子供の頃オノ・ヨーコという人物のプレイから知った。
 幾ら何でもオノ・ヨーコを引き合いに出すのはチックの奥方様に失礼な気もするが、ファミリーバンドというのは割合と、内輪のぬるま湯的な馴れ合いが音に現れてしまうことが多そうに思う。

ザ・コンプリート・コンサート

ザ・コンプリート・コンサート

  • アーティスト: リターン・トゥ・フォーエヴァー, チック・コリア(key), vo) スタンリー・クラーク(b, key) ゲイル・モラン(vo, ジョー・ファレル(fl), ジェリー・ブラウン(ds), flh) ジョン・トーマス(tp, flh) ジェイムス・ティンズレー(tp
  • 出版社/メーカー: ソニーミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 1993/08/21
  • メディア: CD

 そういった緩みを救っているのは、何よりチック・コリア自身の優れたミュージシャンシップなのだが加えてもう一つ、ベースマンであるスタンリー・クラークの存在がある。
 聞き通してみて改めて感じるがこの二人は音楽的な双生児とも言えそうなくらい手が合う。チック・コリアの長い活動歴にあって最も手の合うプレイヤーを誰か一人選ぶとしたら疑問の余地はないだろう。
 表現の場や手段が音楽である以上、実生活上の奥方様よりも音楽上の女房役のほうがより大きな貢献を見せるのは当然であって、チック・コリアという人はこういう点が抜かりないというかソツがない。翻って言えば、エルビンを手放したコルトレーンのバンドはリーダー個人の際限ないエゴの垂れ流しに盲従するだけの極めて密室的内向的な騒音発生集団に変質してしまったのだと今の私は位置づけている。
 コンサートという場所ではなおのこと、音楽には演奏者と聴衆との交流がどこかに必要だと思う。一方向に流れるだけの音楽表現は必ずどこかで硬直した形式に陥って信者以外には近寄りがたい閉鎖性を帯びる。

 チック・コリアという人はジャズという表現枠内での、言ってみればデパートみたいな人で守備範囲が大変広いのだが、このステージでは過去の「サークル」時代の陰々滅々としたフリー・フォームの表現は手控えている。本人にとっては収容数十名の場所で求心的な聴衆を相手にするときとこういった大観衆の前での晴れがましいステージ上では切り出す持ち札が何であるかは区別できているということなのだろう。

 そうは言っても、LP4枚、合計8面、約2時間強を付き合い通すのはやはり少々骨が折れた。1ステージノーカットを音だけで聴き続けるのはどうも私にはいささかしんどい。今となってはやはり絵が伴わないと集中力が維持できなくなる瞬間がある。

 改めて思うがボックスセットとは「信者のお布施」みたいなものではなかろうか。それを購入することも、そこに刻まれた記録を聞き通すこともである。ここでの音楽は外に向かって開かれた上質なエンターテインメントではあるけれど、そういった表現姿勢であるにしても、一つのバンドの音だけを2時間追い続けることにはある程度のストイシズムが必要なのだと改めて知った次第。


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