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Absolutely Free/The Mothers of Invention(アブソリュートリー・フリー/フランク・ザッパ) [音楽のこと(レビュー紛いの文章)]

 私事だが、中学校同期生のクラス会のような宴会が過日あって、来年初頭にもう一度同窓会をやろうということになった。それで、幹事会という名目で月に一度ばかり準備かたがた飲み会のようなことが習慣付きつつある。私は柄にもなく名簿の編纂係を買って出て、時たま過去のことを色々思い出しながらExellのセルを埋める時間が散発する日常だ。

 正直なところ、中学校の3年間は必ずしも楽しいばかりの日々ではなかった。どちらかと言えばネガティブな記憶のほうが勝っているのかもしれない。それは疎外感とか違和感という言葉で表すのが近そうだ。

 それでは何故、今更クラス会などという集まりにいそいそと出向くのかといえば、違和感なり疎外感なりが時間の経過と共にどんな風に変化しているのかを確認したい気持ちがどこかにあるからなのだろうと考えている。我ながら妙な志向だ。しかしさすがに皆様齢を重ねただけあっていい意味で大人になり、包摂性が出てきて無難に宴会は盛り上がり、時間は過ぎていく・・・集合意識として一期一会的ないい意味での気負いが円満な時間を形成しているのだろうな、とは思う。滅多に会えないのだからいい思い出を作っておきたいという気持ちは参加した方々の共通項ではあると思う。しかし、幹事会と銘打った月に一度の集まりともなると事情は少しばかり変わってくる。それは日常の出来事であり、しばしばきれい事抜きでの三十数年前への逆行でもある。

 数日前の飲み会で、顔も名前も思い出せない(ということはおよそ印象に残っていない)以前の同級生から「あんたは昔からヘンな人だった」と言われて私の記憶は30数年前に遡っていった。50近くにもなって第三者が何人もいる前でやおらこんな物言いをするその人物の大人としての神経なり常識には大いに首をひねりたくなる。在学中ロクに話をしたこともないその人物が、一体私の何を知っていてそんな決めつけ方をするのかという懐疑はさておき、確かに私はヘンな奴ではあったと思う。

 中学生時分の精神生活を思い返すとき、決まって頭の中で鳴る音楽が幾つかある。代表的なものがこれだろうか。

アブソリュートリー・フリー(紙ジャケット仕様)

アブソリュートリー・フリー(紙ジャケット仕様)

  • アーティスト: フランク・ザッパ,マザーズ・オブ・インヴェンション
  • 出版社/メーカー: ビデオアーツ・ミュージック
  • 発売日: 2008/06/18
  • メディア: CD

  中学生の年齢でこういう音楽に親しむことは良いことなのかそれとも好ましくないことなのか、今でも答えは出ていない。

フランク・ザッパを聞き始めるようになったのは兄の影響だが、当時不思議な位何か意識の中心に働きかけてくるものがあった。こういう音楽にすんなり馴染める中学生の心象風景というのは一体どういうものなのか、私の他には誰も共感してくれる同級生はいなかったので推し量りようがない。本作に惹き付けられていたという事実がそのまま学校なり世間なりに対する違和感なり疎外感を表していたことになるのかもしれない。

 今でも不思議なことがある。当時私の家にあった本作は通信販売で購入したMGM/Verveの米盤プレスだった。当然ながら訳詞はおろか英文の歌詞カードさえ付いていなかった。しかし学校や家庭に対するフラストレーションをしこたま抱え込んでいた当時の私はここで何か、当時の自分の心象風景にひどく近しい何かが扱われているように思えて日々やたらと本作を聴きまくっていたのだった。後年、訳詩の添付されたCDを買い直してみると、学校で段々居場所を失っていく劣等生の歌(Status Back Baby)や要領よく立ち回って順当に成長していく兄に対比される落伍者の弟を扱った歌(Brown Shoes Don't Make It)があったりする。これ、そのまま当時の私そのものだw英語力など今も昔も全くないが、当時の私は本作のどこに投影すべき自分の姿を見いだしていたのだろうか。言葉を介在しない音だけの表現で、聡明でも何でもないひねた中学生を引き入れたのだとすればそれこそが何とも摩訶不思議な音楽の力と言っても良いのではないだろうか。

 つんのめり気味のタテのりビートにザラザラした感触のギターの出音、ストリングスの不協和音やラストのSEで聴かれる猥雑で無軌道な喧噪、おちゃらけたような皮肉を効かしたようなボイス、それら断片の隅から隅までが当時の私の心象風景を何ともヴィヴィットに反映している。

 レビューまがいでさえない、私自身の益体もない思い出話みたいなテキストになってしまったのが不本意だが機会を見て音楽そのもののことにも言及しておきたいと考えています。 

 

 


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いっぷく

いろいろな音を創造する彼の感性と波長を中学生で受け止めたとは柔軟な頭脳に受け入れられたということでしょう。
shim47 さんは当時日本では最年少のザッパファンかも。
by いっぷく (2008-11-19 07:33) 

shim47

いっぷく様、コメント有り難うございます。
お世辞にも出来がいいとは言いかねる私の頭脳ですが、当時幾らかの柔らかさはあったのかもしれません。
 冒頭、大統領のメッセージを茶化したステートメントで発せられるPlastic Peopleという言葉が中学生当時の私の意識には何か本能的に飲み込めました。今でもそれは人間観のベースになっているようにも思います。
 しかし、反抗期真っ盛りの中学生にとってその後の人生を考えるとこういう音楽がもたらす影響はいいことなのかそれとも芳しくないことなのか・・・・
 間違いなく言えることとして、学校で音楽の時間にジョン・レノンが取り上げられることはあってもフランク・ザッパはあり得なさそうに思っています。
by shim47 (2008-11-19 16:35) 

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