Courts the Count/Shorty Rogers(コーツ・ザ・カウント/ショーティ・ロジャース) [音楽のこと(レビュー紛いの文章)]
そろそろ2009年も終わり。
年々、身辺には物悲しい出来事やうら寂しい風景に直面する事が増えているように思う。私の周辺にも、私自身にも。
今年は中学校の同窓会を賑々しく行う事で幕が開き、その後およそ一年の間に親しい同級生が二人、病に倒れた。うち一人は入院先で越年する事になるらしい。私自身にも大きな転機がこの先訪れる。
色々あるがとにかく、真摯にその日その日を生き抜いていけばそのうち何かいい事あるさ、と、自分に言い聞かせながら生活は続く。
音楽そのものとは直接関係のない私事になってしまったが、中年を過ぎてからよく聴くようになったレコードにこんなのがある。
- アーティスト: ショーティ・ロジャース
- 出版社/メーカー: BMG JAPAN
- 発売日: 2002/06/26
- メディア: CD
腕達者なウェスト・コースターの面々によるベイシー・トリビュートという企画である。
若い頃に何となく買い、かなり長い間余り聞く事もなかったのだがここ数年はなにかしら晴れがましい気分になりたい時に針を降ろす頻度が上がってきた。
トランぺッターとしてのショーティ・ロジャースにはこれまであまり注意が向く事がなかったのだが、本作で聴かれるようなバンド・リーダーとかアレンジャーとしての資質にはつくづく感心する。
本家であるカウント・ベイシーの美点を忠実に踏襲しながらよりスマートで整合感のあるホーンアンサンブルはいつ聴いても何かしら心の中の霧を払拭してくれるような作用をもたらしてくれる。
ここでのリズム・セクションにフレディ・グリーン風のギタリスト、例えばスティーブ・ジョーダンあたりが加わっていれば更に弾力的な音楽が出来上がってより本家風の仕上がりとなっていたのだろうが敢えてそれをしなかったのが本セッションの独自性なのだろうと私は好意的に見ている。ドラムがシェリー・マンである事も相まってビートの跳ね具合にクリーンな心地よさがある。
聴き所は沢山あり過ぎて書ききれないほどだが、思いついた事を断片的に記しておくと後にアレンジャーとして大成するマーティ・ペイチ。プレイヤーとしては結局、中堅どころの域を出なかったがここでの御大風プレイはかなり堂に入っている。御大自身結構色々なピアニストに真似されやすい演奏スタイルなのだろうがあれはやはり偉大な個性と称するべきなのだなあとあらためて感じると同時にマーティ・ペイチというピアニストの器用さにもニヤッとしたくなる。
残念ながら目立ったソロワークは聴かれないがOBのハリー・エディソンがブラスセクションに配されてあるのは隠し味といったところか。 入れ替わり立ち替わり現れるサックスのソロはいずれもレスター・ヤング風味が横溢していて出色なのはやはりズート・シムズ。全曲3分前後のコンパクトな内容で各人のソロは短いがどれも「もっと聴きたい」と思わせる密度の濃さだ。
細部を挙げていくと長文になってしまうので重箱の隅をつつくような話は別の機会に譲るとして、気分の沈みがちな日曜の夜あたりに本作を聴いていると、ちょっと陳腐ながら明日への活力みたいなものが湧いてくる、私にとってはそんな働きのあるのが本作である。
来年はきっと、何かいい事があるさー、と楽天的な気分で年を越したいものです。あと何日かを残して今年を有意義に過ごしたい日曜日でした。
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