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「ソラリス」2作品を続けて観る [映画のこと(レビュー紛いの文章)]

 いささか月並みではあるけれどかねてから、それまで見た映画のベストワンは?と訊かれたら迷わず「2001:a space odyssey(邦題:2001年宇宙の旅)」と答えることにしていた。それで2番目はというと「惑星ソラリス」と答えるのが今に至るまで私のお約束である。
 ソラリスは二十歳頃、釧路の映画館(今はもう閉館したテアトルスガイである)で見た。

惑星ソラリス

 未来への諦念を代償とした魂の浄化、救済というモチーフはその後も「サクリファイス」で再び取り上げられるが、たかだか20年かそこらしか人生時間を生きてはいなかった当時の私でさえ生きることについての色々な何かを考えずにはいられない映画だった。

 とは言え、当時、ベストワンとその次との間には明確な一線があった。当時は若かったのでキューブリックの突き放すように冷徹な世界観のほうに、より惹かれていたのだろう。今考えると、あの映画は終始「神の視点」で描かれていたのだ。超越的な存在やある種の絶対性に自分自身を重ね合わせることに、てらいや恥じらいがなかった程度には、当時の私は擦れてはいなかったということなのだと思うことにする。
 しかし歳をとって色々な失敗を重ねることで自分の限界を色々な場面、色々な属性について思い知らされ続け、後悔の種を嫌というほど抱え込むようになってくるにつれて私の内部ではこれまで見た映画のベストとその次との差はだんだん縮まりつつある。

 早くに母親を亡くし、父とは折り合いが良くない。妻とは不和のあげく自殺によって先立たれた主人公は明らかに心に傷を負っている。そして彼は、傷ついた魂の浄化と望むべきありようであった人生のやり直しをここ(主人公が生活していた地球上のどこか)ではないどこか別のところ(コミュニケーションが成立せず、潜在意識を探っては自分の一部を実体化させて送りつけてくるだけの「ソラリスの海」)に求めたのであった。
 先日、うんと以前に買い込んだレーザーディスクを引っ張り出して観てみたが、何度観ても泣かせるエンディングである。歳をとればとるほどメッセージの重みが増してくる感じとでも言おうか。

 私の持っているレーザーディスクはなにぶん初期のもののせいで画面はモヤモヤしているはサーチノイズが音声に紛れ込んできて聞きづらいはで、困りものなので数日前に見直してみてDVDで買い直すことにした次第である。これから生きていく時間の中で何度も見直すことになるだろう。

 というところで、ハリウッド制作のリメイク版が存在するのを思い出した。リメイクの出来というのはほとんど絶対と言っていいくらいオリジナル以下だというのが私の持論である。ましてや昨今のハリウッド映画のことだ、劇場公開されたときには近親憎悪的な不愉快さを覚えてパスしたのだった。

 
ソラリス 特別編 (初回限定版)

 どこがどういけ好かないのかは観る前からあらかた察しはついていたが、ゲテモノ食いの心境でゲオからDVDを借りてきた。
 いろんなレビューで目にする悪評が至極まっとうに思える出来である。時間を返してくれというのが見終わっての感想だった。何と通俗的な、何と陳腐な・・・・
 SF三文恋愛映画とでも言うべきか、圧倒的な愚劣さに唖然とした。ハリウッド製の映画というのは何故こうも、しゃにむに単純明快馬鹿明朗なハッピーエンドをこじつけなくてはならないのか?
 リメイクには愚作が多いという格好のサンプルに遭遇した思いだ。さっさと忘れることにする。いや待て待て、忘れたくても忘れられないものがこの凡作にも一つはあることを思い出した。

 それは、亡くなった奥様役の女優である。まるで陸上選手のような逞しい体躯と人を睨み殺すことさえ出来そうな物凄い目つき。あれが頭にこびりついて離れない。せっかく涼しくなって安眠できるようになってきたというのに、床についてあの目つきを思い出すと、私は怖くなって眠れないほどなのだ。


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