ショートホープと永ちゃんにまつわる思い出など [嗜好品(喫煙関係)]
以前も書いたことがあるかもしれないが私は絵に描いたようなヘビースモーカーである。現在、私は一日40本くらいの煙草を灰にする。学生の頃は一日20本くらいだったと記憶しているので20数年かけて喫煙量が倍増したことになる。歳をとるにつれて生きることへのストレスはだんだん増大しており、減少したことはない。
ストレスと喫煙量にはある比例関係があると私は確信しているのだが、物事を余り深く考えるたちではないので、ムーアの法則喫煙版の厳格な検証はいつかまた暇なときにでもしてみたい。
喫煙の習慣は15歳くらいで身につけたので、以来かれこれ30年近く、かなり年季が入ってきた。16歳の頃から、銘柄はほぼ一貫してホープである。時たま興味本位で他の銘柄を試してみるが長続きした試しがない。50歳がそう先ではない現在の年齢でこういう銘柄を続けているというのは、同年代の方々から見て一種、救いがたいニコチン中毒患者、乃至は殆どヤケッパチと言って良い蛮勇の発露に見えるらしい。
ホープという銘柄に注目したのは中学校3年生の時だった。不良の鏡とも言うべき同級生から私はこの銘柄を教えてもらった。
彼はその少し前にキャロルのコンサートに出かけた。30数年前のことだ。当時キャロルは時代の寵児だった。熱狂的なファンであるところの彼は開場前に帯広市民会館に忍び込み、楽屋をのぞきに行ったのだそうだ。
うろ覚えだが、その時の彼の話を思い出すに、矢沢の永ちゃんはパンツ一丁で(真冬の帯広で、ましてやおんぼろの市民会館である)、まるで笑点の大喜利みたいに座布団を何枚も重ねた上に胡座をかいて煙草を吸っていたらしい。またそれが彼にはえらくかっこよく見えたらしいのだ。
だからどうなんだといわれるとどうにも答えようがないのだが、とにかくそういう話を彼から聞いて以来、何となくホープを吸い続けている。しかしだからといって私が永ちゃんの音楽の愛好者かと言えばそうではない。永ちゃんが今でもホープを吸っているのかどうかにも関心はない。
ここで煙草の話とは何の関係もなく、永ちゃん率いるキャロルの引き起こした当夜の出来事について書いておきたい。私はそのコンサートに行っていないが、帯広市民にとっては語り草であるご当地では有名な事件である。
そのコンサートは盛況を極めた。大いに盛り上がった。客は沸きに沸いた。メンバーもノリにノった。そして終盤、メンバーの一人、たしかジョニー大倉ではないもう一人のギタリストが演奏中に忽然とステージから消えたのである。
「消えた」というのは舞台演出でも何でもなく、とどのつまり帯広市民会館のステージはおんぼろで普請が悪かったのだ。その上ではね回ったせいでステージの床が抜けて、彼は哀れにもピットに転落したというのが真相なのだが。
そうでなくとも不良のアイドルみたいなバンドのキャロルである。市の施設を破壊するに及んだ蛮行に対して、その後の市当局の対応は苛烈であった。
結局バンド解散後、永ちゃん以外のメンバーは殆ど鳴かず飛ばずみたいになってしまったがとにかく、元キャロルのメンバーに対しては帯広市は施設の使用を厳禁した。その後長く、永ちゃんのコンサートツアーのスケジュールに帯広市が加わることはなくなってしまったのである。この厳しいペナルティは何と15年以上にも及んだ。
かくして帯広市民が、次に永ちゃんを現地のステージで見られるようになったとき、彼は既にリーゼントヘアーも決められないくらい頭髪の薄くなりかかった親父になっていたのである。
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