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Submerged/沈黙の追撃 [映画のこと(レビュー紛いの文章)]

 馬鹿馬鹿しいとかくだらないとかが予め分かり切っているのについついやってしまうことってありませんか?

 以前にも書いたことがあるが、私にとってはDVDのレンタルショップに出かけていってスティーブン・セガールの主演するソフトを借りてくることがそれに当たる。
 
 近年はぶくぶくに太ってきてそれまで殆ど唯一の売り物だったアクションシーンでさえろくすっぽ演じなくなった。アクターとしての取り組み方は歴然たる怠慢さで見ていて情けなくなってくるほどだ。最早以前の面影を残しているものと言えばいろんな場面での類型的な目つきくらいしかない。
「戦ってるんだぞー」とか
「和んでるんだよーん」とか
それぞれのシークエンスに合わせた目つきくらいしかない。
いや情けない、実に情けない。
 いつからこんな風にぐうたらなアクション映画ばかりを粗製濫造するようになったのかを私は大して正確に思い出せない。それを考える時間を割く値さえないと思うからだ。

おとつい借りてきたのはこういうものだった。
 

スティーヴン・セガール 沈黙の追撃 [DVD]

スティーヴン・セガール 沈黙の追撃 [DVD]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD

 沈黙シリーズ8作目とのこと。本作のモチーフはマインドコントロールとかサブリミナルとかいうことらしいが持ち出す主題なんか実はどうでもいいのは沈黙シリーズのお約束だから掘り下げ方が足りないとかいう生真面目な立場からの批判は無意味である。

 徹頭徹尾荒唐無稽で陳腐なストーリー運びと時たま飛び出す生硬な実験的映像(ここでは悪役がマインドコントロールを発動したときに現れる変ちくりんなフラッシュ映像)を指さして嗤い、嘘っぱちを絵に描いたような活劇シーンに失笑し、映画が終わってから自分は何とくだらない時間を過ごしていたのかと後悔し、しかし俺の人生くだらないことだらけだよな、と自嘲する。最後になぜならきっと自分の内実そのものがくだらないからだ、と自省するのがセガール様の映画と接するときの私の作法である。

 ネット上に散在する幾つかの映画レビューを見てみるとこの映画の評価は目も当てられないくらい酷いものだ。それら評価に私は180%位の共感を覚える。
 都市部での状況は分からないが、私の住む田舎町では最早、スティーブン・セガールの新作が劇場公開されることはない。ある時期からのおよそ作品とも言いたくないような作品群を見ているとそれは全く正しい扱われ方だとも思う。

 映画というと私は常に自分の父親のことを思い出す。映画の見方はこうだという接し方を私は父に刷り込まれた。それはまず第一に「鑑賞する」ことであり作品と対峙することだった。彼は私に娯楽としての映画を伝えてくれなかった。勿論暇つぶしとしての映画もだ。
 そういう成り行きを経てきた者としては、暇つぶしよりも更に下向きのベクトルを持つ接し方があるのだということをスティーブン・セガール殿の主演作を見るたびに感じる。それは低劣さとかアホ臭さを共有することで人生時間の無駄を実感する、余暇の時間を浪費することは人生の贅沢であることを実感することでもある。言い換えれば余暇とは浪費できる時間のことだと悟る。これは思考を最大限に巡らせて「2001年宇宙の旅」を鑑賞していたのでは得られない収穫でもあるのだ。と、こんなテキストも野暮ですね。

 全然生産的でも前向きでもないくだらない時間を過ごすことが私は結構好きなのです。だからおよそアクターとしての向上心が鼻くそほどにも感じられないセガール様が濫造する凡作の山もまた私にとっての必要悪であってなかなか止められそうにない。


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