しばらくぶりにコンサートに行く [音楽のこと(レビュー紛いの文章)]
9月3日に実に久しぶりにコンサートに行ってきました。
場所は北海道芽室町の中華レストラン「桃酔」
http://gourmet.hokkaido-np.co.jp/cont/gourmetdata/5221.php
http://www.tokachi.com/presswork/kininaru/0204.html
私のお仕事上の得意先でもあります。オーナーは横浜市は山下町の菜香にて勤務歴10年、広東料理を修めた焼き物のエキスパートであります。お店は以前造り酒屋の倉だった建物を改修したもので、今回気づきましたが意外に音響がよい。
店舗ホールを利用してのミニ・コンサートですがタイトルはQuiet Night Quiet Starsとなっており、ギターとサックスのデュオというちょっと変わった編成でした。
出演は 田野城寿男(ss,ts) 西村嘉洋(g)
田野城寿男さんのHPはこちら
http://www.tanoshiro.com/2007/08/saxguitar_duo.html
HPによれば芽室町は西村氏の故郷でもあるらしい。田野城氏は中札内村在住とのこと(だったかな)。
芽室町というのはゲートボール発祥の地でもありますが、地元の産業や地元出身者を大事にする良き習慣がある暖かみのある町です。
ここからコンサートレビュー紛いのテキスト
開演19:30頃、店内は聴衆でびっしり満員。日頃ジャズは余り聴かなさそうに見える年配の方々も予想より多く、地元で行われるイベントを盛り上げたいという集団意志のようなものを感じた。芽室町はやはり何というか、人情味を感じさせる町だ。
オープニングはアントニオ・カルロス・ジョビンのWaveだった。田野城氏は奇抜な髪型で登場し、最前列に座っていた私などは少々引いたが、演奏前のMCではボサノバの成り立ちと作曲者の経歴を実に理路整然とわかりやすく紹介してくれて外見に似合わず(失礼!)オーディエンスに対する配慮の感じられる方だと思った。
今回のレパートリーはオープニングナンバーをはじめとしてボサノバの選曲が多めだったが、テーマのわかりやすさと終わりつつある夏の夜のコンサートということもあってこの日のオーディエンスの許容範囲や時節の気分に配慮してくれていたらしいと私は勝手に想像している。
2曲目はBlue in Greenで、初演は言わずと知れたこれからのチョイスである。
”マイルス・デヴィスの・・・”としてMCでは紹介されていたが、私のようなひねくれ者は内心、『実はビル・エバンスの作曲したものをマイルスが取り上げて自分名義にしちまったんだー!と言ってくれ!』と思ったりもしたが、ジャズは初めて、とか、内幕話には大して関心がなさそうな当日の聴衆でもあったので余計な含蓄を垂れても仕方がないとの勘案はあったと思う。
本当の作曲者によるピアノトリオ演奏も負けず劣らずの名演。
田野城氏は色々と公的なお仕事をもって居られるだけあってMCが大変親切で誰にでもわかりやすい。
プレイスタイルについてはアドリブフレーズを良く聞き込んでいくとプロフィールの紹介にあるとおり、Devid Liebmanに師事していたことがあるらしい痕跡を窺わせる場面が時折あってニヤッとした。但し、コルトレーンの流れを汲む一連のプレイヤー達とは出音の肌合いが異なり、厚みや柔らかさを感じさせるところに個性を感じた。
ギターの西村氏はフィンガー・ピッキングの名手で、ファーストセット終盤の曲では曲調が段々ブルースタッチのものに変化していき、それからまた16ビート風に変わっていくに従い親指の挙動がチョッパー風になっていくところにアドリブの面白さが見えた。セカンドセットの最終曲、マスカレードではハワイアンギター風の構えからボトルネックっぽい挙動を見せてくれたりもしてサービス精神てんこ盛りの熱演だった。
一見野人風の田野城氏が節度を重んじるかのようなプレイを聴かせてくれたのに対し、外見上は長身白皙で繊細さを窺わせる西村氏の演奏スタイルがソフトトーンでありながらもかなり奔放だったのは意外で、最初のMCにおいて「大変エキサイティングなギタリスト」として紹介されていた理由を私なりに理解したつもりになっている。
ドラムやベースを除いた編成なので、ビート感を強調するような展開は希薄だったが箱のサイズやオーディエンスの状況をうまく読み取って、ポピュラリティに結びつく部分をわかりやすく紹介してくれる親切な選曲であり、進行であり、演奏だったと思う。
予備知識の全くなかった私は最初ポスターの編成を見てカリカリのフリーフォームみたいな展開を予想して心の準備をしていたのだが、終始リラックスして楽しめるプログラムであり、私は大いに堪能しました。
最後に一つ、苦言を呈したい。
ご本人達が了解してのことなのかどうかは分からないが、演奏中にフラッシュをたいてプレイヤーを撮影するのは明らかに聴衆としてのエチケットに欠ける行為であることを知って欲しい。普通一般のホールコンサートであれば機材はその場で没収される行為である。箱の大小に拘わらず、コンサートは音楽を聴く時間であり場所であって撮影会場ではない事くらい一般常識としてわきまえるべきではないのか。
演奏中に店内がフラッシュの光でしばしば真っ白けになる瞬間を私は聴く気をそがれるようで大変邪魔くさく感じたし、出演者のお二方が譜面を読みづらそうに目を細める場面も見てしまい、お節介ながら気の毒に思えた。聴衆が多いこと自体は良かったと思うがマナーを心得ている人達ばかりとは言えなかったのが残念な点で、主催者の方々は念のため、というか録音や撮影は控える旨のアナウンスを予めしておくべきだったと思う。
ライブ&ブログのリンク
どうもありがとうございます。
なかなか鋭い視点ですね。
また、是非お会いしましょう!
by tanoshiro (2007-09-07 21:54)
tanosiro様
ご本人様直々にコメントをいただきまして恐縮至極です。
しょーもないブログですがよろしくお願いいたします。
次回コンサートを楽しみにしております。
by shim47 (2007-09-08 11:20)
久しくライブ行ってませんので、大変羨ましく読まさせて頂きました。
しかし、中華レストランでライブとは素敵ですね!
by mendips (2007-09-14 22:34)
mendips様コメント有り難うございます。
一発勝負のリアルタイムは再生音楽とはまた違った良さですね。当たりはずれで言えば今回はあたりでした。
田野城さんは芸域の広い方なのでジャズに拘らずこれからの活動を見続けていきたいです。
by shim47 (2007-09-15 19:45)