SSブログ

小型スピーカーのステレオイメージ [再生音楽の聴取環境など]

 おとといからあり合わせの適当なステレオセットでひっそり聴き続けている。これも数年前に中古で手に入れた小型のスピーカーでの音出しだ。
 
 箱にはMicro speaker systemと書かれている。ミニより更に小さいことを謳っているわけで、当時のHi Fiブランド名だったLo-Dでこれを販売していた日立製作所にもちょっとした洒落っ気はあったということだろうか。

 箱はプレスした化粧鋼板と鋳物の組み合わせでできていて手に持ってみると大きさの割には重量感がある。
金属はQが高いので重量を持たせることで巧い具合にデッドニングしていることになる。贔屓目に見れば、ここ何年かハイエンドシーンの主流的な考えである無共振志向を先取りしていたことになる。箱を叩いてみてもコツコツ言うだけで全く響かない。

 しかしこういう造りはこのサイズだからできることであって、よく売れるようなサイズでは途轍もない目方になるので商品としての現実味はかなり薄い。一時、旭川の某メーカーがダクタイル鋳鉄でできた箱のスピーカーを製造していたがその後どれくらい売れたのだろうか。

 このスピーカーは平行線で繋ぐ場合はインピーダンスが20Ωとかなり高い。通常聴取する音量とするためにはアンプのボリューム位置は時計でいう11時から1時くらいの角度になる。ということは一番おいしいボリューム位置で通常音量が得られることになり、見かけによらず結構使える。
 とは言え何分この大きさなので周波数レンジは望むべくもない。ウッドベースの音などは倍音のそのまた倍音がかろうじて拾える程度だし、高い音域もカンカンと喧しく青天井に伸びる爽快感はない。そんなわけでそれらしい帯域バランスを得るためにはアンプの側であれこれと操作せざるを得ないことは前回書いた。

 テーブルの上であれこれ位置を変えているとミニチュア的なサウンドステージが現れる。位置を少しずつずらしていくとレンズのピントが合うように音像が焦点を結んでこびとのバンドがずらっと並ぶ様子が何だか可笑しい。モノラル再生ではテーブル上10センチくらいのところに見えない球状の発音体が現れる錯覚が得られる。流行らなかったがバイノーラルというのはこういう聞こえ方のことなのだろうか。

 20年前にステレオイメージの魅力にとりつかれてコンデンサースピーカーに切り替え、悪戦苦闘を続けたがこうも呆気なくお手軽に効果が得られると一体今までの苦労は何だったのかと思う。ある理想論として、無限に小さい点音源に勝るものはやはりないのだと再確認した次第。
 但しHS-01はポータブルラジオに毛の生えたような感触の出音しか得られないわけで、あくまでお遊び用サブスピーカーの域を出ないのは言うまでもない。

 モノラルの時代にはもっぱら周波数レンジや振動体のレスポンスだけが論議の対象だったがスピーカーが2本に増えることでステレオイメージという新たな座標軸が生まれて話はややこしさを帯びてきたわけだ。
 世の中に出回るスピーカーはどんな形式であれ、周波数レンジか、位相特性か、ダイナミックレンジかのどれかが犠牲にならざるを得ない。人が考えて作るモノには必ず何かしかの穴があるものだという摂理をこんな場面で改めて知る。


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。