静電気除去ブラシの効能 [再生音楽の聴取環境など]
今年の夏、私の住む土地は例年とは違って曇りがちの日が多い冷夏だった。秋になっても雨の降る日が多く、まるで雪が解けてからこっち、ずっと梅雨時が続いているような変な感じなのだ。
Lpレコードを聴く機会が今でも多い私としては、通年だと大体今頃の季節から春にかけて静電気に悩まされることが多い。ポリエチレンの内袋からレコードを取り出した瞬間にパチパチパチッと音がして部屋の中の埃がLPの盤面に吸い付くあの現象は余り愉快なものではない。帯電したLPレコードは音質が劣化しているという話を何かの雑誌で読んだ記憶はあるが自分の聴覚として実感できたことはない。私が鈍感なのか雑誌の記述が針小棒大な誇張なのか定かではないが埃の付着がないにこしたことはないのは間違いないところだろう。
以前、ピストル型の静電気除去ツールを使っていたことがあってそれはそれで結構納得のいく効果があったのだが引っ越しのどさくさに紛れてどこかに紛失しそれっきりになっていたが、なければないで帯電したLPレコードの始末が大変であれこれ物色しているうちに何年も経ってしまった。高価なレコードクリーニングマシンを所有している方々には無縁の悩みなのだろうがLPレコードに吸い付いた埃というのは全く始末に負えない厄介者で、ありきたりのレコードクリーナーで拭き取りきれることがない。必ず筋状に拭き残しが出てこれを拭き取ろうとしてクリーナーで盤面をむやみにこすると尚更帯電が酷くなってますます埃を吸い付ける悪循環に陥るのでやはり静電気はなにがしかの方法で始末しなければならない。
信憑性には乏しいのだが、以前知り合いの誰かが私の使っていたピストル式は陰イオンの発生がインパルス状であるからして盤面に小さなPit(穴)が発生するとのご高説を垂れていたことがあった。勿論目視で確認できるようなものでもないしどうせ聴いたところで判別できるわけもないので聞き流していたがやはりどこかで気になっていたので静電ブラシを幾つか試してみた。安価な事務機器用を買ってみたことがあったがブラシそのものが粗く、LPレコードの盤面を撫でるには忍びないので別の用途に回して東志で輸入しているロングセラーのミルティを買ってきた。
さすがにがさつな事務機器用ブラシとは大違いでまるで水分を含んで濡れているようにねっとりした感触である。相当細い繊維が使われているようでこれなら心おきなく盤面をブラッシングできそうだ。ピストル型と比べての利点はブツ自体が安価で買いやすいのと陰イオンの射出によって電気的に中和させるのではなく人体に放電させる形式なので半永久的に使用できる点。 いい気になってうっかりブラシを手で触っていると手の脂が付着してしまうのでこれは御法度だろうと自戒しつつ愛聴盤のお手入れにいそしんだ。
音質上の向上がいかほどのものかが私には判別できないが、あらためてサニー・マレイのシンバルレガートに聞き惚れた次第。もう何百回となく針を降ろした盤なのだが手入れ次第では音の鮮度みたいなものが十分保たれるのは何か安心をもたらす。保険のつもりでCDも買ったがやはり私はアイラーは最初の出会いという経緯もあるので可能な限りLPで聴き続けていきたい。
ただ考えてみると、今年は前述の通り湿っぽい天気が続いているので今のところブラシの御利益を実感できるほどの強烈な帯電に出くわす場面がさほど多くない。活躍するのは来月以降あたりからだろうか。
コメント 0