蠅/ジョルジュ・ランジュラン [書籍]
二日ばかりくだらない私事でハエのことを続けて書いた。読み返す値もないクズ文章だが教を含めてハエのことが意識の中である位置を占めてはいる。
ハエと言えば以前読んだ本を思い出す。
文庫本でも刊行されていたと思う短編集、全編グロい。8年前、引っ越しの時私はかなりの割合でもう読まなさそうな本は処分してしまったが記憶に引っかかりそうな本は残しておいた。本書はその中に混じっているはずなのだがどこかに紛れ込んでしまっているようだ。内向する自意識がカオスを生み出し、自らはまりこんで破滅していくといったモチーフが多く、その辺が私には何かしっくり来る。邦訳されているのがこの短編集だけらしいところが残念で、他にももっと色々読んでみたいストーリーテラーだ。
この映画の原作でもあった。
肉体が変容してフリークスに化けるというのが毎度クローネンバーグの題材だが、あいにく私は余り良き理解者ではない。現実世界であっても大体の人は内面において、既に何らかの形で奇形化している部分があると私は思っていて、その部分が何かの拍子に露出する瞬間に接する事のほうがより強い印象を受ける。想像上のどんな怪物よりも生身の人間が獣性をむき出しにして狂ったときのほうが余程恐ろしい、というのがスタンリー・キューブリックの視点だと思うが私はそちらのほうにより馴染み深いものを感じている。
映画としては子供の頃テレビの何とか映画劇場で見たような記憶のあるこちらのほうがゾクゾク来た。年端もいかず、まだすれっからしではなかったからだろうか、今になって改めてレンタルか何かで借りてきてみてみようかとも思う。何かまた違った感想が出てくるかもしれない。
蝿、生身の人間、グロいといえばこれを思い出さずにはいられない。「15少年漂流記」の悪質なパロディとも言えそうだがとにかく陰惨な話だ。閉じた場所で次第に狂いはじめ、殺し合う子供達の話。タイトルは聖書に由来しているのだそうだが、私には全然見当が付かない。子供というのは決して善良一辺倒ではない。数年前に話題になった「バトル・ロワイヤル」あたりは本書あたりにヒントがあるのではないかと考えている。
こうしてみるとハエがタイトルになった小説というのは大体どれも胸糞の悪い醜悪な内容のものばかりのように思えるが、それとても本物のハエが放つ醜悪さよりはまだ幾らかマシであるとも思える。私はとことん、ハエが嫌いだ。
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