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Bird Symbols/Charlie Parker(バード・シンボルズ/チャーリー・パーカー) [音楽のこと(レビュー紛いの文章)]

 別のエントリーであらためて書いておこうと思うのだが、私には一種、持病があって何かの拍子にある種のミュージシャンのレコードを聴き始めるとその人の演奏を次から次と手当たり次第棚から引っぱりだしてきては無我夢中で聴き漁り、気づいてみると随分時間が経っていることに気づく。中毒症状のように思えなくもないけったいな病気だ。

 目下この「なんとか中毒」には三種類の病原体が確認されており、 最初の二つは「ロバート・ジョンソン中毒」と「ジミヘン中毒」でもう一つが「パーカー中毒」だ。幸か不幸かCD2枚分の記録しか残されていないロバート・ジョンソンともう一人のジミヘンはさておいてここでのパーカーとは言うまでもなくかのチャーリー・パーカーを指している。

 

jazz_c_big.jpg

 

  常々どうもこのお三方には共通した佇まいを感じている。ブルース、ロック、ジャズと並べてみて彼らはそれぞれ、そのカテゴリーの中で一人だけいることを許される場所に収まっているように思う。

 語りだせばきりがないそれぞれの音楽世界なわけだが、ジャズに関して言えば例えばマイルスあたりの録音は一つのパッケージとしての完結度が結構高いのでたて続けに何枚も聴きまくることは私の場合はないのだがパーカーは何故かいったん聴き始めると止まらなくなる。これ一枚を聴いておけば区切りがつきそうだと思いながら実は中毒症状発症ののきっかけとして機能しているのがダイアル・セッションのコンピレーションである本作、Bird Symbolsで、もう30年くらいの間、わかっていながらもう思い出せないくらい同じことを繰り返しているのは私が学習能力の全くない人物であることを現しているがチャーリー・パーカーの音楽世界のある種、魔力の証明でもあると妙な確信を持っている。

Bird Symbols

Bird Symbols

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Griffin Music
  • 発売日: 1997/10/21
  • メディア: CD

 アウトテイクでさえもが大きな意味を持つチャーリー・パーカーなのでコンピレーションを作成するのは至難の業で、どう選曲したところで必ず『どうしてあの曲のあのテイクが漏れているんだよ!』という不満が出てくるのは免れない。ましてや本作は元々LPレコードとして編集されたものなので曲数の制限がなおさらきつい。しかしそれでも本作の編集センスは最大公約数的に考えうる限りのベストを尽くしていると今でも思う。ダイアル・セッションの全テイクを網羅したスポットライトの企画は確かに歴史的な偉業だが本作はそこからの最良の抽出結果であって(発売された順番は逆だが)プロセスの全過程を検証するような聴き方とは別の、比較的気軽に(あくまでこの人にしては、の話だが)接することのできる取っつきの良さはある。

 個人的には先鋭的というかアグレッシブな傾向の曲よりもブルースナンバーだったりスローバラッドにやや寄り気味の匙加減と受け止めているが、歳を取ってあまり学究的な対峙の仕方が好きでなくなってきたせいもあって近年だんだんターンテーブルに載る機会が増えてきた。LP7枚セットのコンプリート・ダイアル・セッションをいつかは手に入れて腹一杯聴きまくってやろうとあれこれ本作に未収録の曲のことを想像しながらバイトに精を出しつつ何度も、時には一日に二回も三回も本作を聴きまくった貧乏学生の頃のことを思い出しながらEmblasable Youあたりに聴き入っていると、私の人生時間もそれなりの積み上げが形成されつつあるのだな、と、妙に感慨深くなる日曜の昼下がりである。 


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麻袋

ダイヤルセッションは80年代後半のCD/LP切り替わりのころにリマスターされてからものすごく音がよくなってますね。もともと東芝版を持ってて、大傷をつけてしまってた一枚目を英版で買ってみたらもう音の太さに驚いてしまって、結局全部買いなおし。サボイセッションの方がいいと思ってたのに、音質のせいで評価がひっくり返ってしまいしました。ロイヤルルーストの集大成版は音はキレイになっても線が細くてガッカリでしたけど。(当時のLPのことで、今の和版CDは知らないのですが)
by 麻袋 (2009-03-12 07:05) 

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